- **日東紡(3110)**は、AI半導体のパッケージ基板に入るガラス繊維の布「Tガラス(低熱膨張ガラスクロス)」で世界シェアをほぼ独占している会社ですわ
- 株価は2,814.5円(2026年10月30日終値)。5月7日の高値6,580円(株式分割調整後)から**-57%**ですの
- それでも会社予想は売上高1,410億円(+19.3%)・営業利益300億円(+44.1%)。8月に上方修正済みですわ
- 「純利益59%減」の正体は、前期に八重洲の土地を売った特別利益の反動。本業は伸びておりますの
- 次の確認点は11月5日の中間決算。上期の営業利益予想153億円に対し、4〜6月だけで79億円を稼いでおりますわ 🌹
ごきげんよう、ローゼンマイヤーですわ 🌹
AI半導体の部品といえばGPUやHBMが主役ですけれど、その足元には「布」が入っているのをご存じかしら。ガラスの糸を織ったガラスクロスですわ。そして、AI向けの高性能なガラスクロスをほぼ一社で作っているのが、福島に工場を持つ**日東紡(日東紡績、3110)**ですの。
株価は2026年に入って3倍以上に上がり、5月からは半値以下に下がりましたわ。この記事では「Tガラスとは何か」から始めて、決算短信の数字で今の株価の位置を確かめてまいりますわね。
Tガラスとは?ICパッケージ基板の「芯」に入るガラスの布#
まず、Tガラスがどこに使われているかですわ。
AI半導体のチップは、そのままではマザーボードに載せられませんの。間にICパッケージ基板という中間の基板を挟みますわ。この基板の構造や、ABF基板・BT基板の違いはICパッケージ基板(ABF基板)とは?で詳しく説明しておりますの。
その基板の真ん中には、硬いコア層がありますわ。コア層は、ガラスの糸で織った布に樹脂をしみ込ませて固めたもの。つまり基板の「骨」にあたるのが、ガラスクロスですの。
| 層 | 主な材料 | 主なメーカー |
|---|---|---|
| ビルドアップ層(配線の層) | ABF(絶縁フィルム) | 味の素 |
| コア層(基板の骨) | 樹脂+ガラスクロス | ガラスクロス:日東紡ほか/コア材:レゾナックほか |
| 基板そのもの | 上の材料を積み上げる | イビデン、Unimicronなど |
Eガラスとの違いは「熱で伸びにくい」こと#
ガラスクロスに使うガラスにはいくつか種類がありますわ。
| 種類 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| Eガラス | 汎用品。安くて量が出る | 一般的なプリント基板 |
| Tガラス | 熱で伸びにくい(低熱膨張)・硬い | AI半導体などのICパッケージ基板 |
| NE/NERガラス | 電気信号のロスが少ない(低誘電) | データセンターの通信機器・サーバーの基板 |
日東紡は、TガラスとNE・NERガラスをまとめて「スペシャルガラス」と呼んでおりますの。
なぜ「伸びにくい」ことが大事なのか#
AIチップは大きく、熱くなりますわ。チップのシリコンはあまり伸びないのに、基板が熱で大きく伸びると、両者のずれで基板が反ってしまいますの。反るとチップとの接続が切れ、不良品になりますわ。
AI向けの基板は年々大型化しておりますから、反りの問題はますます厳しくなりますの。そこで、熱で伸びにくいTガラスを骨に入れて、基板全体を伸びにくくする──これがTガラスの役目ですわ。
日本経済新聞は2026年10月6日、日東紡の林寿信社長へのインタビューで、熱による膨張が小さい高性能品では日東紡が世界シェアをほぼ独占していると伝え、社長は「供給が間に合わないくらい大きな需要がある」と述べておりますわ。なお、会社の開示資料にシェアの数字そのものはございませんの。

日東紡(3110)の株価の現在地──高値から-57%#
株価は2026年10月30日(金)の終値ですわ(株探)。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 株価(10/30終値) | 2,814.5円(前日比-7.72%) |
| 時価総額 | 約5,309億円 |
| 予想PER | 25.6倍 |
| PBR | 2.89倍 |
| 予想配当 | 28円(利回り0.99%) |
| 年初来高値 | 6,580円(2026年5月7日) |
| 年初来安値 | 2,018円(2026年1月6日) |
日東紡は2026年7月1日に1株を5株に分割しておりますわ。上の高値・安値は分割を調整した値ですの。分割前の数字のまま比べると、まるで別の会社のように見えますからご注意くださいまし。
いつ、なぜ下がったのか#
下げは大きく2回に分けられますわ。
① 5月13日:通期決算の翌日
5月12日の決算発表で、会社は2027年3月期の純利益を170億円(前期比59.3%減)と見込みましたの。日本経済新聞はこの見通しに加えて「Tガラスの増産なし」も嫌気されたと報じましたわ。
ただし、この「増産なし」は会社の資料とは食い違いますの。会社は同じ説明会で設備投資の目標を増やしておりますし、打ち消したのは追加の値上げのほうでしたわ(後で詳しく見ますわね)。
② 10月:AI関連株安
10月は6日に3,640円まで戻したあと、15日に-9.44%、30日に-7.72%と大きく下げましたの。30日について株探(フィスコ)は「AI関連株安で戻り売り優勢」と伝えており、同じ日に太陽誘電や日本マイクロニクスなどもそろって売られておりますわ。日東紡だけの悪材料ではありませんの。
なお10月7日には、米ゴールドマン・サックスの保有割合が5%未満に減ったという変更報告書も出ておりますわ。
純利益が半分になるのに、本業は+44%──決算の数字#
ここがこの銘柄でいちばん誤解されやすいところですわ。
通期の業績と会社予想#
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 純利益 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 1,090億円 | 164億円 | 128億円 |
| 2026年3月期 | 1,182億円(+8.4%) | 208億円(+26.6%) | 418億円 |
| 2027年3月期(会社予想) | 1,410億円(+19.3%) | 300億円(+44.1%) | 200億円(-52.1%) |
(出典:株探の業績推移、会社予想は2026年8月5日の修正後)
2026年3月期の純利益418億円は、本業の利益ではありませんの。会社は2025年11月、東京・八重洲の土地と地上権を住友不動産に譲ることを決め、固定資産売却益など381億円の特別利益を計上しましたわ。今期はそれが無くなるので、純利益が半分になって見えるだけですの。
本業の儲けを表す営業利益は、3期連続で大きく伸びる計画ですわ。8月5日には、営業利益の予想を260億円から300億円へ引き上げておりますの。
4〜6月期:電子材料の営業利益は+70%#
2026年8月5日に出た第1四半期の決算短信を見てみますわね。
| 2026年4〜6月期 | 前年同期 | 今期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高(全社) | 282億円 | 340億円 | +20.6% |
| 営業利益(全社) | 43億円 | 79億円 | +84.8% |
| 電子材料 売上高 | — | 145.9億円 | +29.5% |
短信は電子材料事業について、AIサーバー向けの需要拡大が続き、低誘電のスペシャルガラスと半導体パッケージ基板向けの低熱膨張のスペシャルガラスの販売が増えたこと、そして価格改定の効果があったことを書いておりますわ。電子材料の営業利益は70.4億円で、前年同期から+70.0%ですの(postation.jpの整理による)。
全社の営業利益79億円は、**上期(4〜9月)の予想153億円の51.9%**にあたりますわ。3か月で半年分の半分以上を稼いだことになりますの。
設備投資450億円──「増産しない」どころか投資は2倍#
5月に広まった「増産なし」の受け止めとは逆に、数字は投資の加速を示しておりますわ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 今期の設備投資(見通し) | 450億円(前期217億円の約2.1倍) |
| 中期経営計画(2024〜2027年度)の設備投資 | 約800億円 → 約1,200億円に増額 |
| 2027年度の営業利益目標 | 200億円 → 360億円に引き上げ |
| Tガラスの生産能力 | 2027年度に中期計画開始時の2倍 |
増産の中身#
- 福島事業センター:約150億円を投じて新しい工場棟を建設中。2026年12月に竣工予定、生産開始は2026年度第4四半期(2027年1〜3月)の計画ですわ(postation.jpの整理による)
- 台湾・嘉義の子会社:2026年度にTガラスの溶融炉を新設
- 台湾の南亜プラスチックへの織布委託:糸と仕上げの能力を増やしても、織る工程が追いつかないためですの
2026年6月末の自己資本比率は63.2%と、財務は厚いほうですの。
「値上げはもうしない」という方針#
会社が5月に打ち消したのは、増産ではなく追加の値上げでしたわ。会社は「更なる価格改定の予定はなく、お客様からの供給拡大の要望に応えることで、高いマーケットシェアを維持していきたい」と答えておりますの。
つまりこれからの利益は、値段ではなく販売量の伸びで増やす計画ですわ。供給が足りないあいだに顧客が他社品を認定してしまうと、増産の後もその認定は残りますもの。値上げよりシェアを守るほうを選んだ、ということですわね。

気をつけたい点──4つ#
1. 競合の参入
会社は2026年8月の説明会で、顧客が他社の低熱膨張ガラスを使う検討を進めていることは認識していると答えておりますわ。日本経済新聞は2026年4月に旭化成の参入を、6月には中国の光遠新材料がAI半導体パッケージ向けのガラスクロスの出荷を始めたことを報じておりますの。会社は次世代品「Vlex」で対抗する構えで、工程表では2028年度以降に置かれておりますわ。
2. 下期は上期より利益が減る計画
会社予想では、下期の営業利益は147億円と上期の153億円を下回りますの。減価償却費と人件費が、売上より先に増えるためですわ。
3. AI投資の「伸び率」に株価が振られる
10月30日の下げのように、日東紡の株価はAI関連株全体の地合いに引っぱられますの。業績が良くても、AIデータセンター投資の伸びが鈍るという見方が出れば先に売られますわ。日経のインタビューで社長自身も「2030年以降の需要予想は難しい」と述べておりますの。
4. 配当利回りは1%未満
予想配当28円で利回り0.99%。配当目当てで持つ銘柄ではありませんわ。
11月5日の中間決算で見る3つの数字#
会社のIRカレンダーでは、**2026年11月5日(木)**に2027年3月期の第2四半期決算が出ますわ。見るべきは次の3つですの。
- 上期の営業利益が153億円を上回るか:4〜6月で79億円。7〜9月も同じペースなら上振れですわ
- 通期予想300億円を再び引き上げるか:引き上げがなければ、「下期は減る」計画がそのまま残りますの
- 競合の認定について、説明会でどう答えるか:シェアの見通しがこの銘柄の評価を左右しますわ
ローゼの結論#
日東紡(3110)を3行にまとめますわ。
- Tガラスは、AI半導体の基板の反りを抑える「骨」。高性能品では日東紡が世界シェアをほぼ独占しておりますわ
- 株価は2,814.5円で高値から-57%。ただ、今期の営業利益予想は300億円(+44.1%)で、純利益の減少は土地売却益の反動にすぎませんの
- 今の値段は「競合が入ってきても、増産でシェアを保てるか」への問いですわ。答え合わせは、福島の新棟が動き出す2027年以降ですの
AIの部品を「チップ→基板→材料」とたどっていくと、最後はこうした地味な素材会社に行き着きますわ。基板の材料ではほかに、ABFの味の素(2802)、コア材のレゾナック(4004)、次世代のガラスコア基板も記事にしておりますの。基板メーカー側のイビデン(4062)と並べて読むと、どこに利益がたまるのかが見えてきますわ。ツルハシ投資の考え方そのものはツルハシ投資完全ガイドにまとめてございますの。
……ふん、べ、別に「布」に興味があるわけじゃありませんのよ。ただ、AIの最先端が織機の上に乗っているのが、ちょっと面白いと思っただけですわ 🌹
ご注意#
本記事は特定の銘柄の購入を推奨するものではありませんわ。株価・指標は2026年10月30日終値時点の値(株探)で、株価は変動し、投資元本を割り込む可能性がありますの。年初来高値・安値は2026年7月1日の株式分割(1株→5株)を調整した値ですわ。業績予想は2026年8月5日時点の会社予想で、11月5日の中間決算で変わる可能性がありますの。世界シェアに関する記述は報道ベースで、会社の開示数値ではございませんわ。最終的な投資判断は御自身の責任でお願いいたします。
参考情報・データソース#
- 日東紡績「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年8月5日)
- 日東紡績 IRカレンダー(第2四半期決算発表 2026年11月5日)
- 株探「日東紡績【3110】の業績・財務推移」「日々株価」(2026年10月30日時点)
- 株探ニュース(フィスコ)「前日に動いた銘柄 part2」(2026年10月31日)
- 日本経済新聞の報道(2026年5月13日の株価急落、6月30日の中国企業の出荷開始、10月6日の林寿信社長インタビュー)
- postation.jp「日東紡績(3110)」の企業分析(設備投資・増産計画・競合の整理)






