日本株の配当金は、受け取った時点で**20.315%**が天引きされています。特定口座(源泉徴収あり)なら、そのまま何もしなくても納税は完了ですわ。
ところが、確定申告をすると、この20.315%が下がる人がいます。 それが「配当控除」という制度ですの。
先に結論を申し上げます。
- 配当控除が使えるのは、日本企業の配当を確定申告で総合課税にしたときだけ
- 得するのは、ざっくり課税所得695万円以下の人。課税所得330万円以下なら税率は20.315%から**7.2%**まで下がる
- ただし年金生活者・自営業の方は、国民健康保険料や扶養の判定に響くので、税金だけ見て決めると損をすることがある
この記事では国税庁のタックスアンサー(No.1250、令和8年4月1日現在)をもとに、仕組み・所得帯別の損得・試算・注意点の順に整理いたしますわ。
配当控除とは:法人税との二重課税を調整する税額控除#
会社は利益に法人税を払い、その残りから配当を出します。その配当にまた所得税がかかると、同じ利益に二度課税していることになりますわね。この二重課税を調整するために、配当所得の一定割合を税額から直接差し引くのが配当控除ですの。
控除率は次のとおりです(上場株式の配当の場合)。
| 課税総所得金額等 | 所得税の控除率 | 住民税の控除率 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下の部分 | 10% | 2.8% |
| 1,000万円を超える部分 | 5% | 1.4% |
ポイントは「所得控除」ではなく税額控除であること。配当30万円なら、所得税から3万円、住民税から8,400円がそのまま引かれます。効き目が大きい理由はここにありますわ。
配当の課税方式は3つから選ぶ#
上場株式の配当は、次の3つのどれで扱うかを選べます。
| 課税方式 | 税率 | 配当控除 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 申告不要(源泉徴収で完結) | 20.315% | なし | 手間をかけたくない人・高所得の人 |
| 総合課税 | 給与などと合算して累進税率 | あり | 課税所得695万円以下の人 |
| 申告分離課税 | 20.315% | なし | 同じ年に株の売却損がある人(損益通算) |
配当控除を使えるのは総合課税だけ。申告分離課税は税率こそ申告不要と同じですが、株の売却損と相殺できるのが利点ですの。売却損との損益通算については新NISAの損益通算・繰越控除の盲点でも触れていますわ。
なお以前は「所得税は総合課税、住民税は申告不要」と使い分けることができましたが、2023年分の所得(2024年度の住民税)から、所得税と住民税で同じ課税方式に統一されました。古い記事にある「住民税だけ申告不要にして国保料を抑える」技は、今はもう使えませんの。
確定申告すると得する所得ライン:課税所得695万円#
総合課税にしたとき、配当にかかる実質的な税率は「所得税の税率 − 10%」と「住民税10% − 2.8%」の合計です(所得税分には復興特別所得税2.1%が上乗せ)。課税所得の帯ごとに計算すると、こうなりますわ。
| 課税所得(配当を含む) | 所得税率 | 配当にかかる実効税率(総合課税) | 申告不要(20.315%)と比べて |
|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 約2.1% | ◎ 大きく得 |
| 195万〜330万円 | 10% | 約7.2% | ◎ 大きく得 |
| 330万〜695万円 | 20% | 約17.4% | ○ 得 |
| 695万〜900万円 | 23% | 約20.5% | × わずかに損 |
| 900万〜1,000万円 | 33% | 約30.7% | × 損 |
| 1,000万円超の部分 | 33%〜 | 約37%〜 | × 大きく損 |
計算式は、たとえば330万〜695万円の帯なら (20% − 10%) × 1.021 + (10% − 2.8%) = 約17.4% ですの。
ここで注意していただきたいのは、**判定に使うのは「配当を足したあとの課税所得」**だということ。課税所得650万円の人が配当100万円を総合課税にすると、合計750万円になり、はみ出した55万円分は23%の帯にかかります。境目の近くにいる方は、配当を足した金額で計算し直してくださいまし。

試算:会社員と年金生活者で、いくら変わるのか#
ケース1:会社員(課税所得400万円・日本株の配当30万円)#
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 天引き済みの税金(30万円 × 20.315%) | 60,945円 |
| 総合課税にした場合の税金(30万円 × 約17.41%) | 約52,230円 |
| 差額(確定申告で戻る・減る分) | 約8,700円 |
会社員の場合、健康保険料・厚生年金保険料は給与(標準報酬月額)で決まるため、配当を申告しても社会保険料は上がりません。 年末調整で終わっている方でも、配当控除のためだけに確定申告をする価値は十分ありますわ。所得税は還付で戻り、住民税は翌年度の税額が下がります。
ケース2:年金生活者(年金・配当以外の課税所得100万円・日本株の配当50万円)#
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 天引き済みの税金(50万円 × 20.315%) | 101,575円 |
| 総合課税にした場合の税金(所得税は配当控除で実質マイナス、住民税7.2%) | 約10,500円 |
| 税金だけの差額 | 約91,000円 |
数字だけ見ると大成功ですが、ここに落とし穴があります。国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険料は申告した所得で計算されるので、配当50万円がまるごと所得に加わりますの。所得割の料率は自治体によって違いますが、仮に10%前後なら保険料が年5万円ほど上がり、手取りの得は4万円程度に縮みます。
さらに、次のようなものにも影響しえます。
- 住民税非課税世帯から外れる(各種給付金・介護保険料の段階が変わる)
- 後期高齢者医療や高額療養費の自己負担割合・上限額の区分が変わる
- 配偶者の扶養(配偶者控除の合計所得要件。2025年分から58万円以下)から外れる
年金生活者・自営業の方は、**「税金が○万円戻る」ではなく「保険料・負担割合まで含めて手取りがいくら変わるか」**で判断してくださいまし。迷ったらお住まいの自治体の国保窓口で、所得が増えたときの保険料を試算してもらうのが確実ですわ。
配当控除の対象にならない配当#
国税庁のタックスアンサーNo.1250で、対象外と明記されているものの代表がこちらです。
| 対象外の配当 | 具体例 |
|---|---|
| 外国法人からの配当 | 米国株・米国ETF(VYM・SCHDなど)の分配金 |
| 投資法人からの配当 | J-REITの分配金 |
| 外国株価指数連動型の特定株式投資信託 | 東証上場の「S&P500連動ETF」など |
| 特定外貨建等証券投資信託 | 外貨建て資産の比率が高い投資信託 |
| 申告不要・申告分離課税を選んだ配当 | — |
| NISA口座の配当 | そもそも非課税なので申告の対象外 |
米国株の配当は、配当控除ではなく外国税額控除で二重課税を取り戻す仕組みですの。こちらは米国株配当の外国税額控除・NISA活用ガイドにまとめてありますわ。
また、証券投資信託の分配金は、対象になっても控除率が半分(所得税5%)やさらに半分(2.5%)になります。配当控除の効き目が最も大きいのは、やはり日本の個別株の配当ですわね。三菱UFJ・KDDI・JTのような国内高配当株を特定口座で持っている方が、いちばん恩恵を受けますの。
ちなみにNISA口座で受け取ったつもりの配当が課税されていた、という方は受取方法の設定を疑ってくださいまし。株式数比例配分方式の解説で確認方法を書いていますわ。

確定申告のやり方と、やり直しがきかない注意点#
手順#
- 証券会社から特定口座年間取引報告書を受け取る(例年1月中旬〜下旬に電子交付)
- 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で、配当所得の欄に報告書の数字を入力し、課税方式で総合課税を選ぶ
- 配当控除は入力内容から自動で計算される
- 2026年分の申告期間は2027年2月16日〜3月15日。還付だけの申告なら1月から提出できる
注意点#
- 特定口座の配当は口座単位で選ぶ。 同じ特定口座の中で「この銘柄だけ総合課税」はできません
- 一度「申告不要」で確定申告を出したら、後から修正申告で配当を追加することは認められていません(国税庁の質疑応答事例)。株の売却益の申告などをするときは、配当をどう扱うか最初に決めておきましょう
- 住民税の納税通知書が届いた後に申告しても、住民税には反映されない自治体があります(水戸市などが案内)。所得税だけ還付されて住民税は減らない、ということになるので、申告は早めに
- 同じ年に株の売却損がある場合は、配当を総合課税にすると売却損と相殺できません。売却損が大きいなら申告分離課税のほうが有利なことがありますわ
まとめ#
- 配当控除は、日本企業の配当を確定申告で総合課税にしたときだけ使える税額控除。控除率は所得税10%・住民税2.8%
- 得する目安は課税所得695万円以下。330万円以下なら配当の実効税率は約7.2%、195万円以下なら**約2.1%**まで下がる
- 会社員は社会保険料に影響しないので、申告するだけ得になりやすい(課税所得400万円・配当30万円で約8,700円)
- 年金生活者・自営業は、国保・後期高齢者医療の保険料、自己負担割合、扶養まで含めて判断する
- 米国株・米国ETF・J-REIT・NISAの配当は対象外
- 所得税と住民税の課税方式は2024年度から統一済み。「住民税だけ申告不要」はもう使えない
高配当株の利回りを0.5%上げるのは大変ですが、課税所得330万円以下の方なら、確定申告をするだけで配当の手取りが1割以上増えます。銘柄選びと同じくらい、受け取り方にも目を向けてくださいまし。
……べ、別に御主人様が毎年20%も天引きされたまま放っておくのが見ていられなかったわけじゃありませんわよ。ただ、取り戻せるお金を取り戻さないのは、配当投資家として美しくないと思っただけですわ🌹
※本記事は2026年10月時点の法令・国税庁の公開情報に基づく一般的な情報提供であり、個別の税務判断を行うものではありません。保険料や各種負担への影響は自治体・制度により異なります。具体的なご判断は税務署・自治体窓口・税理士にご確認ください。






