10月22日、ディスコ(6146)が2027年3月期の中間決算を出しましたわ。
| 2026年4〜9月期 | 前年同期 | 2026年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,945億円 | 2,570億円 | +32.1% |
| 営業利益 | 788億円 | 1,166億円 | +47.9% |
| 中間純利益 | 559億円 | 803億円 | +43.7% |
| 中間配当 | 129円 | 186円 | +57円 |
営業利益率は45.4%。製造業でこの数字はほとんど見かけませんわ。
それなのに翌23日、株価は一時10.01%安の46,100円まで売られ、2025年12月以来10カ月ぶりの安値をつけましたの(日本経済新聞)。6月23日につけた年初来高値91,680円から見ると、ほぼ半値ですわ。
「最高益なのに、なぜ下がるの?」──この記事はその問いに、決算短信と速報開示の数字だけでお答えしますわ。
ディスコは何を売っている会社か──「切る・削る・磨く」の専業#
AIで儲かる会社を探すとき、NVIDIAのようなチップ設計の会社ではなく、チップを作るための道具を売る会社に目を向けるのが「ツルハシ投資」ですわ。考え方の全体像はツルハシ投資完全ガイドにまとめておりますの。
その中でディスコは、とても分かりやすいツルハシですわ。
| 製品 | 何をするか | 例えるなら |
|---|---|---|
| ダイサ(ダイシングソー) | 1枚のウエハーを、数百〜数千個のチップに切り分ける | パン切り包丁 |
| グラインダ | ウエハーを裏から削って極薄にする | かんな |
| ポリッシャ | 削った面を鏡のように磨く | 紙やすり |
| 精密加工ツール(消耗品) | 上の装置に付ける刃(ブレード)や砥石(ホイール) | 包丁の刃・かんなの刃 |
装置を売ったあとも、刃と砥石は削れて減りますわ。装置が動けば動くほど消耗品が売れる──プリンターとインクの関係ですの。
なぜAIで伸びるのか──HBMは「削って積む」メモリ#
AI半導体の横に載る高帯域メモリ「HBM」は、DRAMのチップを12枚・16枚と縦に積み上げた部品ですわ。積むためには1枚1枚を髪の毛より薄く削らなければなりませんの。HBMの仕組みはHBM関連銘柄の記事で詳しく扱っておりますわ。
さらに、複数のチップを1つのパッケージにまとめる先端パッケージングでも、切断と研削の工程が増えますの。ICパッケージ基板(ABF基板)が「チップを載せる器」なら、ディスコは「器に載せる前のチップを切って削る道具」ですわね。

株価の現在地──6月高値から-46%、それでも1年前とほぼ同じ#
株価は2026年10月23日(金)の終値ですわ。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 株価(10/23終値) | 49,290円 |
| 年初来高値(2026/6/23) | 91,680円 → 高値から -46.2% |
| 2025年12月末終値 | 48,170円 → 年初来 +2.3% |
| 2025年10月末終値 | 51,610円 → 約1年で -4.5% |
| 時価総額 | 5兆3,491億円 |
| PBR | 8.52倍 |
| 信用倍率 | 11.16倍 |
| 予想PER | 会社が通期予想を出していないため算出不可 |
(株価・指標は株探)
月足を並べると、2026年は「上げて、全部返した」1年だったことが分かりますわ。
| 月 | 月末終値 | 前月比 |
|---|---|---|
| 2025年12月 | 48,170円 | +10.15% |
| 2026年1月 | 66,190円 | +37.41% |
| 2月 | 75,500円 | +14.07% |
| 3月 | 61,240円 | -18.89% |
| 4月 | 74,010円 | +20.85% |
| 5月 | 65,090円 | -12.05% |
| 6月 | 81,260円 | +24.84% |
| 7月 | 58,480円 | -28.03% |
| 8月 | 58,120円 | -0.62% |
| 9月 | 57,450円 | -1.15% |
| 10月(23日まで) | 49,290円 | -14.20% |
月の値幅が±20%を超える月が、1年で6回もありますの。この銘柄の「普通の値動き」がこれだと思っておいてくださいまし。
7月の-28%は、ディスコ単独の話ではありませんわ。米国の半導体株指数(SOX指数)が6月22日から7月29日までに-28.6%下げた、半導体株全体の調整ですの。日本の半導体20銘柄の下げ方はAI半導体銘柄マップで並べておりますわ。
中間決算を分解する──7〜9月期はむしろ加速していた#
ディスコは四半期ごとに数字を出しますので、第1四半期(7月23日発表)を引き算すると、7〜9月だけの数字が出せますわ。
| 連結 | 4〜6月 | 7〜9月 | 前四半期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,143億円 | 1,427億円 | +24.9% |
| 営業利益 | 490億円 | 676億円 | +37.9% |
| 営業利益率 | 42.9% | 47.4% | +4.5pt |
(中間期の数字から第1四半期を差し引いて算出)
7月時点で会社が出していた4〜9月期の予想は、売上高2,428億円・営業利益1,049億円でしたの。実績はそれを売上高で約143億円(+5.9%)、営業利益で約117億円(+11.2%)上回って着地しましたわ。
出荷額は四半期で過去最高#
ディスコを見るうえで、売上高より大事な数字があります。出荷額ですわ。
装置の売上は、お客様の工場で検収が終わった時点で計上されますの。だから売上は実際の需要から数か月遅れて動きますわ。そこでディスコは2006年から、出荷額を四半期ごとに速報で開示しておりますの。株価は売上よりも、こちらに反応しますわ。
10月6日の速報(個別ベース)はこうでしたの。
| 個別 | 2026年4〜6月 | 2026年7〜9月 | 前四半期比 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 出荷額 | 1,165億円 | 1,239億円 | +6.4% | +60.0% |
| 売上高 | 950億円 | 1,185億円 | +24.7% | +38.9% |
出荷額は四半期として過去最高。会社は「生成AI向けを中心に、精密加工装置・精密加工ツールの双方が高水準」と説明しておりますわ。
ところが翌10月7日、株価は**-6.29%**。日経は「想定内」の声を、株探は「サプライズは乏しい」と報じましたの。この時点ですでに、市場は「良い数字」には慣れてしまっていたのですわ。
下げた本当の理由──10〜12月の出荷額が「横ばい」#
ディスコは「顧客の投資意欲は短期間で激しく変動し、需要の予測は困難」として、業績予想を1四半期先までしか出しませんの。今回出たのは4〜12月の累計予想ですわ。そこから10〜12月だけを取り出すと、こうなりますの。
| 連結 | 7〜9月(実績) | 10〜12月(会社予想) | 前四半期比 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 出荷額 | 1,486億円 | 1,496億円 | +0.7% | +31.7% |
| 売上高 | 1,427億円 | 1,324億円 | -7.2% | +21%程度 |
| 営業利益 | 676億円 | 581億円 | -14.1% | ― |
| 純利益 | ― | 415億円 | ― | +13.1% |
| 想定為替 | ― | 1ドル=151円 | ― | ― |
(出荷額は株探の報道、売上高・利益は4〜12月予想から中間実績を差し引いて算出)
前年同期と比べれば、出荷額+31.7%、純利益+13%。普通なら立派な増益予想ですわ。
けれど前の四半期と比べると、出荷額はほぼ横ばい、売上と利益は減る見通しですの。4〜12月の純利益予想1,219億円は、QUICKコンセンサス(アナリスト予想の平均)を下回ったと日経は報じておりますわ。
株価が見ているのは「去年より増えたか」ではなく、**「伸びるスピードがまだ上がっているか」**ですの。7〜9月に+6.4%(個別)伸びた出荷額が、10〜12月は+0.7%。この減速が、PBR8倍台まで買われていた銘柄には重かったのですわ。
加えて「HBMの仕様が簡素になるかも」という懸念#
10月上旬には、NVIDIAが次世代チップ「Rubin Ultra」に載せるHBMについて、当初の12段積みから8段積みを含む複数の案を検討しているという話が市場に流れましたの(BigGo ファイナンスほか)。積む枚数が減れば、1個のHBMあたりの研削工程も減る──という連想ですわ。
これに対してディスコ側は、仕様が簡素になればパッケージの数が増えるので悪い話ではない、という見方を示していると報じられておりますの。ただ、この話はまだ「検討」の段階で、確定した情報ではありませんわ。数字ではなく思惑で動いた部分として、割り引いて見るのがよろしいですわね。

いまの株価は割高か──わたくしの試算#
会社が通期予想を出していないので、予想PERは公式には出ませんの。そこで、4〜12月の予想EPS 1,123.43円を単純に12か月分へ引き伸ばした値(1,498円)で割ってみますわ。
49,290円 ÷ 1,498円 = 約33倍
あくまで「10〜12月と同じペースが1〜3月も続いたら」という粗い試算ですわ。1〜3月が伸びれば倍率は下がり、落ちれば上がりますの。
比べる材料として、東京エレクトロン(8035)やアドバンテスト(6857)も、同じように「業績は過去最高、株価は高値から大きく下」という形になっておりますわ。製造装置株全体が、今の利益ではなく、来年以降の設備投資のペースで値付けされている局面ですの。
100株でいくら?#
49,290円×100株=492万9,000円。NISAの成長投資枠(年240万円)では1単元も入りませんわ。単元未満株(1株から買えるサービス)を使う方法もありますけれど、議決権や配当の扱いが証券会社ごとに違いますので、確認してからにしてくださいまし。
配当は中間186円が確定、期末は「未定」ですの。前期は年505円(中間129円+期末376円)でしたわ。
気をつけたい点──3つ#
1. 1四半期先しか見えない
ディスコ自身が「需要の予測は困難」と書いている会社ですわ。次の手がかりは、1月上旬の10〜12月期の出荷額速報と、1月下旬の決算で出る1〜3月の予想ですの。それまでは誰にも分かりませんわ。
2. 値動きが極端
上の月足のとおり、月に±20%以上動く月が1年で6回。決算の翌日に10%動くこともありますの。信用倍率11倍台は、信用買いの残高が売りより大きく、戻り局面で売りが出やすい状態でもありますわ。
3. AIデータセンター投資の「伸び率」に依存
出荷額の伸びを支えているのは生成AI向けですわ。AI投資の総額が増え続けても、その伸び率が鈍れば、今回のように株価は先に下がりますの。
ローゼの結論#
ディスコ(6146)を3行にまとめますわ。
- 4〜9月期は営業利益+47.9%、利益率45.4%。7〜9月の出荷額は個別で+60.0%と四半期の過去最高。業績そのものはAI需要を正面から受けておりますわ
- 株価は49,290円、6月高値から-46%。下げた直接の理由は、10〜12月の出荷額予想1,496億円が前四半期比+0.7%の横ばいだったことですの
- 予想PERは非開示。4〜12月EPSを単純年換算すると約33倍。今の値段は「AI向けの研削需要がもう一段伸びるか」への賭けですわ
この銘柄を見るときの問いは「最高益なのに安い」ではありませんわ。「1月の出荷額速報で、伸び率がまた上向くか」──見るべきはその1点ですの。
ツルハシ銘柄は他にもありますので、ツルハシ投資完全ガイドのカテゴリ別一覧と並べて、どの道具がいちばん長く使われるかを比べてみてくださいまし。判断は御自身でなさってくださいませ。
……ふん、べ、別に半値になったから気になっているわけじゃありませんのよ。ただ、刃物を研ぐ会社が研がれる側に回っているのが、ちょっと皮肉だと思っただけですわ 🌹
ご注意#
本記事は特定の銘柄の購入を推奨するものではありませんわ。株価・指標は2026年10月23日終値時点の値であり、株価は変動し、投資元本を割り込む可能性がありますの。予想PERは会社予想の4〜12月EPSを単純に年換算したローゼの試算であり、会社が開示した数値ではありませんわ。10〜12月の数値は会社予想から中間実績を差し引いた計算値で、実績とは異なる可能性がありますの。HBM仕様変更に関する話は報道ベースで、確定情報ではございませんわ。最終的な投資判断は御自身の責任でお願いいたします。






