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ラクス(3923)株価は割安か|PER15.9倍の正体と楽楽精算のAI戦略・2Q決算の注目点
Photo by rozenmaier.com

ラクス(3923)株価は割安か|PER15.9倍の正体と楽楽精算のAI戦略・2Q決算の注目点

··6390 文字·13 分

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ローゼンマイヤー
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ローゼンマイヤー
AI・米国株・ETFの投資リサーチブログ。企業IR・決算資料・公的統計などの一次情報にあたり、AIインフラを支える「ツルハシ銘柄」を中心に分析しています。
目次

「楽楽精算」のラクス(3923)の株価は、2026年10月14日の終値で1,131円。

株探に表示される予想PERは15.9倍ですわ。売上の8割以上をクラウドで稼ぎ、営業利益率が30%を超えるSaaS企業としては、ずいぶん安く見えますわね。

でも、この15.9倍をそのまま信じてはいけませんの。今期の利益には、創業事業だったIT人材派遣を売った「一度きりの利益」約167億円が入っているからですわ。

ラクス(証券コード:3923・東証プライム) の株価がいま本当に割安なのか。この記事では、2026年8月14日に出た第1四半期決算と会社の説明資料をもとに、PERの「中身」を分解し、11月の第2四半期決算で何を確かめればいいのかまで整理いたしますわね🌹


ラクスはどんな会社か|中小企業向けクラウドの「楽楽」シリーズ
#

ラクスは、中小・中堅企業のバックオフィス業務をクラウドで支える会社ですわ。主力サービスはこちら。

  • 楽楽精算:経費精算システム。会社の看板商品ですの
  • 楽楽明細:請求書・納品書などの帳票を電子で発行するサービス
  • 楽楽販売:販売管理・案件管理をノーコードで作るデータベース
  • 楽楽電子保存:電子帳簿保存法に対応した書類保管
  • メールディーラー(楽楽自動応対):問い合わせメールの共有・管理
  • 楽楽ビジネスカード:2026年5月に提供を始めた法人カード

インボイス制度や改正電子帳簿保存法の対応需要を追い風に、長く高成長を続けてきた日本のSaaSの代表格ですわ。

そして2026年4月1日、会社の形が大きく変わりましたの。創業事業だったIT人材派遣の子会社「ラクスパートナーズ」を、BREXA Technologyへ約187.7億円で譲渡したのですわ。以後のラクスは「クラウド専業」になりました。

この売却が、決算の数字をとても読みにくくしていますの。順番にほどいていきますわね。


株価の現在地|「SaaSの死」で721円まで売られ、そこから+56%
#

まずは株価の流れを、月末の終値で並べますわ。

時点出来事終値
2025年9月末高値圏1,358円
2025年10月27日52週高値(取引時間中1,329.5円)—
2025年12月末2025年の大納会1,040円
2026年3月23日52週安値・年初来安値(取引時間中721.9円)—
2026年3月末「SaaSの死」の売りが一巡743.2円
2026年8月28日年初来高値(取引時間中1,209円)—
2026年9月末9月は−13.9%1,002円
2026年10月14日直近1,131円

2026年の1〜3月、ラクスは3か月連続で下げましたの。年末の1,040円から3月末の743円まで、**約−29%**ですわ。

原因はラクス個別の悪材料ではなく、「AIエージェントが業務ソフトの仕事を奪い、座席課金のSaaSは要らなくなる」という、いわゆる**「SaaSの死」論**でしたわ。日本株も米国株も、ソフトウェア銘柄がまとめて売られた時期ですの。この論そのものの是非は、「SaaSの死」は本当か|AIエージェント時代にソフトウェア銘柄を見極める3つのモノサシで詳しく検証していますわ。

そこから4月以降は持ち直して、10月14日の1,131円は3月の安値から約+57%、年初から約+9%。それでも52週高値の1,329.5円からは**約−15%**の位置ですわ。

テクニカル面では、10月14日時点で株価は25日・75日・200日の移動平均をすべて上回っています(株探調べで200日線から+19.15%)。下げ止まって上向きに戻している途中、という形ですの。

ひとつ気にしておきたいのは信用買い残ですわ。10月9日時点で買い残は約119万株、信用倍率は7.25倍。9月半ばの9.49倍からは下がりましたけれど、上値で売りたい人がまだ多く残っている形ですの。


数字①:予想PER15.9倍は「売却益込み」|本業ベースでは約29倍
#

ここが今回いちばん大事なところですわ。

会社が出している2027年3月期(2026年4月〜2027年3月)の通期計画はこちら。

項目2026年3月期(実績)2027年3月期(計画)前期比
売上高602.9億円597.0億円−1.0%
うちクラウド事業517.7億円597.0億円+15.3%
うちIT人材事業85.2億円—譲渡済み
営業利益173.5億円205.0億円+18.2%
営業利益率28.8%34.3%+5.6pt
純利益132.9億円252.0億円+89.6%
EPS(1株利益)36.91円71.16円+92.8%
1株配当7円8円+1円

純利益が**+89.6%**と、ほぼ倍になっていますわね。予想PER15.9倍は、1,131円をこのEPS71.16円で割った数字ですの。

ところが、この純利益にはIT人材事業の譲渡に伴う特別利益 約167億円(第1四半期に計上済み)が入っていますわ。来年以降はもう出てこない、一度きりの利益ですの。

そこで、本業の稼ぐ力だけで見直してみますわ。計算はあくまでわたくしの概算ですから、目安としてご覧になってくださいまし。

ステップ数字
計画営業利益205.0億円
会社計画の法人税率(32.2%)を差し引く約139億円
発行済株式数(EPS計画から逆算で約3.54億株)で割る1株あたり約39円
株価1,131円 ÷ 約39円PER 約29倍

表示上の15.9倍ではなく、本業ベースでは30倍近い、ということですわ。

さらに、第3四半期からは後で触れるプラスアルファ・コンサルティングの持分法適用で、のれん相当額 約250億円の償却(10〜20年で定額償却の想定。年12.5億〜25億円規模)が始まりますの。持分法の利益で一部は相殺されますけれど、純利益を少し押し下げる要因になりますわ。

では29倍は高いのか。売上が年15%前後伸び、営業利益率が30%台に乗った日本のSaaSとしては、**「割安」ではなく「成長がそのまま続く前提の、ほどほどの値段」**というのがわたくしの見立てですわ。PBRも10.44倍、PSRは6.71倍(いずれも10月14日・株探)ですから、資産の裏付けで買う株ではありませんの。

ラクスの予想PERを売却益込みと本業ベースで比べるイメージ


数字②:クラウド事業の売上 +17.8%|「売上微増」は見かけだけ
#

次は、第1四半期(2026年4〜6月)の実績ですわ。

項目2026年3月期 1Q2027年3月期 1Q前年同期比
連結売上高140.8億円142.1億円+0.9%
うちクラウド事業120.7億円142.1億円+17.8%
うちIT人材事業20.2億円——
売上総利益率75.1%81.6%+6.4pt
営業利益36.6億円47.6億円+30.1%
営業利益率26.0%33.5%+7.5pt
純利益35.4億円146.3億円+313.6%
従業員数3,201名2,396名−25.1%

連結の売上は**+0.9%**しか伸びていませんわ。株探の見出しだけ見ると「成長が止まった?」と驚くかもしれませんけれど、これは前年にあったIT人材事業の約20億円が丸ごと抜けたからですの。

クラウド事業だけで比べると+17.8%。こちらが本当の成長率ですわ。

そして見てほしいのは利益率ですの。原価のかかる人材派遣がなくなったことで、売上総利益率は75.1%→81.6%へ。営業利益率は33.5%で過去最高ですわ。会社資料によれば、クラウド事業の営業利益率は前四半期比で5四半期連続の改善ですの。

通期計画に対する進捗も確認しておきますわ。経常利益の進捗率は**23.8%**で、過去5年平均の22.6%とほぼ同じ。会社自身も「社内計画を上回る順調な立ち上がり」と説明していますわ。

利益率改善のもうひとつの理由は、広告宣伝費の絞り込みですの。会社資料でも、売上高に占める人件費率・広告宣伝費率はともに「低下傾向が継続」と説明されていて、今期も広告宣伝費は「一段と効率化を進める」方針ですわ。テレビCMで顧客を取りに行く段階から、既存顧客に機能を足して単価を上げる段階へ移ってきた、ということですわね。


数字③:投資計画 約322億円|売却で得たお金の「行き先」
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IT人材事業の売却で、4月1日時点の現預金は313億円まで膨らみましたの。ラクスはこのお金を、配当ではなく他社への出資に回し始めていますわ。

投資先内容金額
プラスアルファ・コンサルティング(4071)7月までに段階取得 76.6万株約20億円
同上8月21日に追加取得 690.6万株(1株3,350円)→ 議決権**22.21%**で持分法適用会社に約231億円
ROBOT PAYMENT(4374)資本業務提携・12万株(議決権3.10%)約3億円
フリー(4478・freee)6月末までに段階取得 295万株(議決権4.95%)約68億円

合計で約322億円ですわ。第2四半期には借入も行う予定ですけれど、会社は「エクイティファイナンス(増資)の予定はなし」と明言していますの。

狙いはそれぞれこう読めますわ。

  • プラスアルファ・コンサルティング:タレントマネジメントの「タレントパレット」の会社ですわ。2026年4月から共同で「楽楽人事労務」を売り始めていて、経費・請求の「楽楽」に、人事の領域を足す動きですの
  • ROBOT PAYMENT:「請求管理ロボ」の一部機能をOEMで受け、「楽楽債権管理」を作り直す予定(2026年12月以降)ですわ
  • freee:同じ中小企業向けクラウドの競合でもある会社に約5%出資。開示基準には当たらないものの、会社が自ら「投資判断に資する情報」として開示していますの

投資家として気にすべき点は2つですわ。

  1. お金を「株主還元」より「出資」に先に使ったこと。期初時点の総還元性向は11.2%で、会社方針の「20%以上」に届いていませんの。会社は追加還元を「引き続き検討中」としていますわ
  2. 持分法の会計処理。プラスアルファ社の利益の22%分が営業外に入る一方、のれん相当額の償却がずっと続きますの。本業の営業利益には出てこない部分なので、純利益で見るときは注意が要りますわ

数字④:AI戦略|「入力を最大90%削減」は課金につながるか
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「SaaSの死」の不安に、ラクスは2026年6月15日のAI戦略で答えましたの。2030年までに、人は最終確認をするだけで業務が進む「完全自動化」を目指す、という内容ですわ。

ロードマップは3段階ですの。

フェーズ時期中身(楽楽精算の例)
Phase 12025〜2026伝票作成AIエージェント:領収書やカード明細から申請を自動作成
Phase 22026〜2027適格請求書チェックAI、申請レビューAI、証憑取得AIエージェント
Phase 32027〜2029証憑と伝票の自動照合 → 人は最終確認だけ

すでに動いているのが「伝票作成AIエージェント」ですわ。2026年6月16日から提供されていて、30ユーザーで月5,000円からの有料オプションですの。会社の試算では、申請者の入力作業を最大90%削減できるそうですわ。

7月16日からは、法人カード「楽楽ビジネスカード」の利用明細を、このAIエージェントが拾って精算伝票を自動で作る連携も始まりましたの。

ここが投資の観点で大事なところですわ。「SaaSの死」論の核心は、AIが仕事をするほど人の数(座席)が減り、座席課金の売上も減るという心配でしたわね。ラクスのAI機能は、座席課金の上に別料金のオプションとして乗せる形ですの。AIを「売上を減らすもの」ではなく「単価を上げるもの」にできるかどうか。これが、今後の決算で確かめていくべき一番の論点ですわ。

楽楽精算のAIエージェントが経費伝票を自動作成するイメージ


数字⑤:配当利回り0.71%|15期連続増配だが「配当株」ではない
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ラクスは累進配当(前年を下回らない配当)を方針にしていて、今期の計画は年8円。15期連続の増配になる予定ですわ。

ただし10月14日の株価1,131円で割った利回りは0.71%。配当性向も11.2%と低く、配当を目当てに買う株ではありませんの。あくまで成長株として、利益とキャッシュの伸びで評価する銘柄ですわ。

追加還元(自社株買いなど)が出てくるかどうかは、今期の見どころのひとつですわね。会社は「資金需要見合いで機動的に判断」としていますの。


11月の第2四半期決算で見るべき3つのポイント
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ラクスの第2四半期決算は、例年11月中旬に出ますわ(前年は2025年11月14日)。そこで確かめたいのは次の3つですの。

1. クラウド事業の成長率が+15%台を保てるか

1Qは+17.8%でしたわ。通期計画の+15.3%を上回るペースが続くかどうか。ここが落ちると、本業ベースPER約29倍の前提が崩れますの。

2. AIオプションの導入状況が数字で語られるか

伝票作成AIエージェントが何社に入ったのか、単価がどれだけ上がったのか。会社が具体的な数字を出してくるかどうかは、「SaaSの死」論への一番わかりやすい回答になりますわ。

3. 通期計画の修正と追加還元

会社は1Q時点で「業績見通しは精査中、現時点で修正はなし」「追加還元策は引き続き検討中」としていますの。借入とのれん償却を織り込んだ計画修正、そして自社株買いなどの追加還元が示されるかに注目ですわ。


まとめ|表示PERは安く見えるが、本業は「成長の続き」に値段が付いている
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論点現状
株価1,131円(2026年10月14日終値)。3月の安値721.9円から約+57%、52週高値から約−15%
予想PER(表示)15.9倍(売却益 約167億円込み)
予想PER(本業ベース・概算)約29倍(営業利益205億円・税率32.2%で試算)
1Q決算クラウド売上**+17.8%、営業利益率33.5%**で過去最高
通期計画売上597億円(クラウド+15.3%)、営業利益205億円(+18.2%)
投資約322億円(プラスアルファ社・freee・ROBOT PAYMENT)、増資の予定なし
AI伝票作成AIエージェント(30ユーザー月5,000円〜)を有料オプションで提供
配当年8円・利回り0.71%・15期連続増配予定
次の決算2Q決算は例年11月中旬

ラクスの株価を一言でまとめるなら、**「表示PERは安く見えるけれど、中身は成長がそのまま続くことに値段が付いた株」**ですわ。売却益を除けば本業ベースのPERは30倍近く。クラウド事業は年15〜18%で伸び、利益率は過去最高を更新し続けていますの。

ふん、べ、別に「PER15倍台だから割安ですわ」なんて申し上げるつもりはありませんのよ。その数字には一度きりの売却益が入っている、というだけですわ。見るべきなのはクラウド事業の成長率と、AIオプションが単価を押し上げられるかどうか。11月の決算で、この2つは確かめられますの。

同じ業務ソフトでも、米国で中小企業の会計・税務を握るインテュイット(INTU)の分析と並べて読むと、「AIで単価を上げる」戦略がどこまで通用しているかが比べられますわよ。……わたくしがここまで丁寧に分解したのですから、読まないと損ですわよ🌹

参考データ出典: ラクス 2027年3月期 第1四半期 決算説明資料(2026年8月14日)、株探 ラクス 4-6月期決算速報(2026年8月14日)、ラクス「AIで、もっと『楽!』に。ラクス、AI戦略を発表」(2026年6月15日)、M&Aベストパートナーズ:ラクスパートナーズ譲渡の報道(譲渡価額)。株価・PER・PBR・PSR・信用倍率・移動平均乖離率は株探の2026年10月14日終値時点の数値、月足は株探 月間株価より。本業ベースのEPS・PERは会社計画の営業利益と法人税率から筆者が試算した参考値ですわ。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありませんわ。株価は変動し、投資元本を割り込む可能性がございます。配当は将来減額・停止される可能性もございます。投資判断はご自身の責任でお願いいたしますわね。

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