2026年7月14日、IBMの株価は290.23ドルから217.07ドルへ、1日で−25.2%。
創業100年を超える老舗の大型株が、たった1日で時価総額の4分の1を失いましたの。英ガーディアン紙は、1987年のブラックマンデーをも上回るペースの下げだと報じていますわ。
それから3か月。2026年10月7日の終値は220.47ドルで、年初(2025年末終値296.21ドル)から**−25.6%。6月2日に付けた52週高値332.46ドルからは約−34%**ですの。急落のあと、ほとんど戻っていませんわ。
IBM(ティッカー:IBM) は、AIブームの中で何につまずいたのか。この記事では、急落の理由を会社自身の説明と決算の数字から分解し、10月21日のQ3決算で何を確かめればいいのかまで、5つの数字で整理いたしますわね🌹
まず何が起きたのか|決算発表の8日前に「業績の速報」#
IBMは、いまでは売上の半分近くをソフトウェアで稼ぐ会社ですわ。柱は3つありますの。
- ソフトウェア:Red Hat(Linux・OpenShift)、watsonx(企業向けAI)、HashiCorp、Confluent(データストリーミング)、メインフレーム向けの取引処理ソフト
- コンサルティング:企業のAI導入・システム刷新の支援
- インフラストラクチャー:メインフレーム「IBM Z」、Powerサーバー、ストレージ
急落のきっかけは、正式な決算発表(7月22日)の8日前に出た、アービンド・クリシュナCEOの「投資家への手紙」でしたわ。通常の決算日を待たずに、Q2の速報値と「業績が期待を下回った理由」を先に開示したのですの。
この1年の株価を、節目ごとに並べるとこうなりますわ。
| 日付 | 出来事 | 終値 |
|---|---|---|
| 2025年12月31日 | 2025年の大納会 | 296.21ドル |
| 2026年6月2日 | 52週高値(取引時間中332.46ドル) | 329.23ドル |
| 2026年7月13日 | 速報の前日 | 290.23ドル |
| 2026年7月14日 | CEOの手紙でQ2速報を開示 | 217.07ドル(−25.2%) |
| 2026年7月23日 | 正式決算の翌日・52週安値(取引時間中199.19ドル) | 206.65ドル |
| 2026年10月7日 | 直近 | 220.47ドル |
テクニカル面も確認しておきますわ。10月7日時点の50日移動平均は約232ドル、200日移動平均は約254ドル。株価は両方を下回っていて、安値から少し戻したものの、上値の重い状態が続いていますの。
この下げはIBMだけにとどまりませんでしたわ。ガーディアン紙によれば、同じ日にマイクロソフト、ServiceNow、Salesforce、Intuitも3〜5%下落。「AIがソフトウェア企業の稼ぎを奪うのでは」という不安に、火を付けた格好ですの。
数字①:売上172億ドル(+1%)|市場予想178.6億ドルに届かず#
まずは全体像からですわ。7月22日に発表された正式なQ2(2026年4〜6月)決算はこちら。
| 項目 | 2026年Q2 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 172億ドル | +1% |
| 粗利益率(Non-GAAP) | 59.4% | −0.7pt |
| 税引前利益率(Non-GAAP) | 19.2% | +0.3pt |
| 1株利益(Non-GAAP) | 2.93ドル | +5% |
| 1株利益(GAAP) | 2.27ドル | −2% |
| フリーキャッシュフロー | 25億ドル | −3億ドル |
ガーディアン紙が伝えた市場予想は、売上178.6億ドル、調整後EPS3.02ドル。売上は約6.6億ドル、EPSは0.09ドル届きませんでしたわ。
ただ、数字だけを見ると「−25%」に見合うほどの大崩れには見えませんわよね。売上は前年を上回り、利益率はむしろ改善していますもの。
市場が嫌ったのは、どこが崩れたかと、それが一時的なのかのほうでしたの。
数字②:IBM Z −42%|メインフレームとその「付属ソフト」が同時に失速#
セグメント別に、Q1とQ2を並べてみますわ。
| セグメント | 2026年Q1 | 2026年Q2 |
|---|---|---|
| ソフトウェア全体 | +11% | +5% |
| └ Hybrid Cloud(Red Hat) | +13% | +11% |
| └ Data | +19% | +19% |
| └ Automation | +10% | +4% |
| └ Transaction Processing | +6% | −8% |
| コンサルティング | +4% | 横ばい |
| インフラストラクチャー | +15% | −7% |
| └ IBM Z(メインフレーム) | +51% | −42% |
| └ Distributed Infrastructure | +17% | +37% |
(いずれも前年同期比・ドルベース。IBM決算プレスリリースより)
一目で分かりますわね。崩れたのは**メインフレームのIBM Z(+51%→−42%)と、メインフレームの上で動く取引処理ソフトのTransaction Processing(+6%→−8%)**ですの。
IBM Zは、銀行や航空会社の基幹システムを支える大型コンピューターですわ。2025年に出た新型「z17」の販売が絶好調だったため、Q2から前年比が落ちること自体は、会社も4月の時点で織り込んでいましたの。問題は、その落ち方が想定より大きかったことですわ。
クリシュナCEOは手紙の中で、原因をこう説明していますの。
6月の最後の数週間、顧客は四半期の設備投資を、供給が逼迫しているサーバー・ストレージ・メモリーの購入へ振り向けた。値上がりの前に確保するためだ。
AIデータセンターの建設ラッシュで、サーバーやメモリーが品薄・値上がりしていますわよね。顧客企業は「値上がり前に押さえろ」とそちらに予算を回し、その分IBM Zと付属ソフトの大型案件が後回しになった、という説明ですの。さらに、AIによるサイバー攻撃への懸念で、顧客がセキュリティ対策に気を取られていたことも挙げていますわ。
そして手紙には、こんな一文もありましたの。
こうした状況では完璧な実行が求められるが、今四半期、われわれはつまずいた。(中略)多数の大型案件が、想定した時期に成約しなかった。これが未達の大部分だ。
会社自身が「失注ではなく遅延」と言っている点は、覚えておきたいところですわ。

数字③:通期ガイダンス「5%超」→「4〜5%」|下方修正は小さい、でも意味は大きい#
決算と同時に、通期の見通しも引き下げられましたわ。
| 項目 | 4月時点(Q1決算) | 7月時点(Q2決算) |
|---|---|---|
| 売上成長率(為替一定) | 5%超 | 4〜5% |
| 為替の影響 | +0.5〜1ptの追い風 | 中立 |
| フリーキャッシュフロー | 前年比 約+10億ドル | 前年比 約+10億ドル(据え置き) |
引き下げ幅だけを見れば、1%程度ですの。フリーキャッシュフローの見通しも据え置かれていますわ。
それでも株価が25%も下がったのは、IBMが市場から**「AI時代でも着実に5%以上伸びる、安定したソフトウェア株」**として買われていたからですわ。2025年末から2026年初めにかけて、株価は300ドル前後で推移し、6月には330ドル台まで買われていましたの。安定を買われていた銘柄が「読めない四半期」を出すと、その安定に払っていた割増分(プレミアム)がまとめて剥がれますの。
「AIがソフトウェアを食う」という議論については、「SaaSの死」は本当か|AIエージェント時代にソフトウェア銘柄を見極める3つのモノサシで整理していますわ。IBMの場合、顧客の予算が「ソフト」から「AIのハード」に流れたという、**少し違う形の"AIの逆風"**だった点が特徴ですの。
数字④:Red Hat +11%・分散インフラ +37%|崩れていない部分もある#
一方で、伸びている部分もはっきりありますわ。
- Red Hat(Hybrid Cloud)+11%:Q1の+13%からは減速したものの、2桁成長を維持。手紙では「前四半期から成長が加速した」と説明されていますの(為替一定ベースの比較と思われますわ)
- Data +19%:watsonxや、買収したConfluentを含むデータ関連ソフトが2四半期続けて+19%
- Distributed Infrastructure +37%:Powerサーバーとストレージが「過去最高のペース」。受注残は約5億ドル
つまり、顧客の予算がハードに流れた結果、IBMの中でもハード(分散インフラ)は過去最高だったのですわ。押し出されたのはメインフレームとその付属ソフトですの。
加えて、IBMは新しい事業にも手を打っていますわ。
- Lightwell:オープンソースの脆弱性に対応する新サービス。総額50億ドルの取り組みで、Bank of America、Citi、Goldman Sachs、JPMorganChase、Visaなどの大手金融が初期採用。7月8日に一般提供開始
- 量子コンピューター:今後5年で100億ドル超を投資。米商務省とともに量子ウエハー専業ファウンドリ「Anderon」の建設意向を表明し、2029年に大規模な誤り耐性量子コンピューターの実現を目指すとしていますの
- FDE(Forward Deployed Engineer)の採用拡大:顧客企業に常駐してAI導入を進める技術者を増やす方針ですわ
FDEという働き方がなぜ注目されているのかは、FDE(Forward Deployed Engineer)とは?で解説していますわ。量子コンピューター銘柄の全体像は量子コンピューター投資ガイドをどうぞ。
ただし、量子もLightwellも、いまの売上を支える規模ではありませんの。株価を動かすのは当面、ソフトウェアとメインフレームの数字ですわ。
数字⑤:配当利回り 約3.1%|1916年から続く配当と、増えた借金#
IBMを語るうえで外せないのが配当ですわ。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 四半期配当 | 1.69ドル(年6.76ドル) |
| 配当利回り | 約3.07%(10月7日終値220.47ドルで計算) |
| 増配 | 2026年4月に増配、31年連続 |
| 配当の連続支払い | 1916年から毎四半期(2026年9月10日支払い分まで) |
| Q2の配当支払総額 | 16億ドル |
株価が下がったぶん、同じ年6.76ドルで計算した利回りは約2.3%(年初の296ドル)から**約3.1%**へ上がりましたわ。米国の大型テック株で3%を超える利回りは、かなり珍しい部類ですの。
ただし、裏側も見ておく必要がありますわ。
- 現金等は82億ドルで、2025年末から63億ドル減少
- 2026年に入ってからの買収投資は105億ドル(Confluentなど)
- 有利子負債は620億ドル(うちIBMファイナンシング分130億ドル)
Q2のフリーキャッシュフロー25億ドルに対して、配当は16億ドル。単独の四半期では賄えていますが、買収と量子投資にもお金を回しながら、配当を増やし続けられるかは、通期のフリーキャッシュフロー(前年比+約10億ドルの見通し)が守れるかにかかっていますの。
米国の高配当株を一覧で比べたい方は、米国高配当株トップ10の選び方も参考になさってくださいまし。

10月21日のQ3決算で見るべき3つのポイント#
IBMのQ3(2026年7〜9月)決算は、米国時間2026年10月21日の取引終了後(日本時間10月22日の早朝)に発表予定ですわ。見るべきはこの3つですの。
1. 「遅れた大型案件」は成約したのか
CEOは未達の大部分を「成約の遅れ」と説明しましたわ。本当に遅れただけなら、Q3にその分が戻ってくるはずですの。Transaction Processingのマイナスが縮小するかが、いちばん分かりやすい確認点ですわ。
2. Red Hatが2桁成長を保てるか
IBMのソフトウェアの「成長エンジン」はRed Hatですの。ここが1桁成長に落ちると、「メインフレームの一時的な落ち込み」では説明がつかなくなりますわ。
3. 通期ガイダンス(4〜5%)とフリーキャッシュフロー見通しを維持できるか
ここで再度の下方修正があれば、配当を含めた「安定株」としての前提そのものが揺らぎますの。逆に据え置きなら、7月の急落が行き過ぎだったのかを測る材料になりますわ。
まとめ|崩れたのは「安定」という前提。崩れていないのは成長部門と配当#
| 論点 | 現状 |
|---|---|
| 株価 | 220.47ドル(10月7日)。年初来**−25.6%**、52週高値から約−34% |
| 急落の日 | 2026年7月14日、1日で**−25.2%**(290.23→217.07ドル) |
| Q2決算 | 売上172億ドル(+1%)、市場予想178.6億ドルに未達 |
| 崩れた部門 | IBM Z −42%、Transaction Processing −8% |
| 伸びた部門 | Red Hat +11%、Data +19%、分散インフラ +37% |
| 通期見通し | 売上成長「5%超」→「4〜5%」に引き下げ、FCF見通しは据え置き |
| 配当 | 年6.76ドル、利回り約3.07%、31年連続増配 |
| 次の決算 | 2026年10月21日(米国時間・引け後) |
IBMの急落を一言でまとめるなら、**「AIの予算争奪戦で、メインフレームが押し出された四半期」**ですわ。会社全体が壊れたわけではなく、Red Hatも分散インフラも伸びていますの。けれど市場はIBMに「安定」を求めていたので、読めない四半期を出したこと自体が大きな減点になりましたわ。
ふん、べ、別に「利回り3%になったから買い時ですわ」なんて申し上げるつもりはありませんのよ。株価が下がった理由を分解してみると、10月21日に確かめられることがはっきりした、というだけですわ。遅れた案件が戻るのか、Red Hatが踏ん張れるのか、見通しを守れるのか。この3つが揃えば7月の下げは行き過ぎだった可能性がありますし、崩れれば「安定株」の看板を掛け直す必要がありますの。
同じ「AIで稼ぐ側」の老舗でも正反対の値動きをしたマイクロソフト(MSFT)の分析と並べて読むと、市場がいま何にお金を払っているのかが見えてきますわよ。……わたくしが丁寧にまとめたのですから、読まないと損ですわよ🌹
参考データ出典: IBM 2026年Q2決算プレスリリース(2026年7月22日)、Arvind Krishna’s Letter to IBM Investors(2026年7月14日)、IBM 2026年Q1決算プレスリリース(2026年4月22日・当初ガイダンス)、The Guardian(市場予想・同日のソフトウェア株の下落)、IBM 3Q 2026 Earnings Announcement(Q3決算日程)。株価・移動平均は2026年10月7日終値時点(Yahoo Finance日足データより算出)。配当利回りは同終値と年間配当6.76ドルから算出した参考値ですわ。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありませんわ。株価は変動し、投資元本を割り込む可能性がございます。米国株は為替変動の影響も受けますの。配当は将来減額・停止される可能性もございます。投資判断はご自身の責任でお願いいたしますわね。






