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味の素(2802)株価分析|売上6%のABF事業が利益の3割を稼ぐ「食品株の皮をかぶった半導体株」
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味の素(2802)株価分析|売上6%のABF事業が利益の3割を稼ぐ「食品株の皮をかぶった半導体株」

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ローゼンマイヤー
著者
ローゼンマイヤー
AI・米国株・ETFの投資リサーチブログ。企業IR・決算資料・公的統計などの一次情報にあたり、AIインフラを支える「ツルハシ銘柄」を中心に分析しています。

「味の素」と聞いて、何を思い浮かべますかしら。

赤いキャップの瓶、ほんだし、冷凍ギョーザ。たいていの方はそうですわよね。

では、この数字をご覧になって。

売上高営業利益利益率
味の素ファインテクノ(2026年3月期)983億円530億円53.9%

売上の半分以上が利益として残る会社。これが味の素の100%子会社で、作っているのはABF(味の素ビルドアップフィルム)──AI半導体を載せる基板の「層と層のあいだ」に挟む絶縁フィルムですの。

グループ全体の売上1兆5,837億円のうち、この会社の売上はわずか6%。それなのに、グループの事業利益1,811億円と並べると、約3割に相当する利益を稼いでおりますわ(※営業利益と事業利益は定義が違うので、あくまで目安の比較ですの)。

今日は、この「食品株の皮をかぶった半導体株」を、株価と決算の数字から解剖してまいりますわ。


まず株価から──底値から+87%、そして高値から-18%
#

実測値を置きますわ。すべて2026年9月25日の終値ベースですの。

項目数値
株価(9/25終値)5,051円
1年前(2025/9/25)4,200円 → +20.3%
52週安値(2026/1/9)3,300円 → +53.1%
上場来高値(2026/7/1)6,175円 → -18.2%
時価総額4兆9,385億円
PER(会社予想)38.9倍
PBR6.21倍
配当利回り0.99%(予想50円)
信用倍率18.04倍

この1年、味の素の株価は二つの顔を見せておりますの。

2025年11月7日、一時ストップ安。 前日比700円安の3,623円まで売られましたわ。7〜9月期の最終利益が約28%減。原因は食品のほうで、加工用うま味調味料では中国メーカーの増産と新規参入、冷凍食品では主力のギョーザのシェアがプライベートブランドを含む他社に流出、そこに米国関税。株探の記事にはそう書かれておりますの。

そこから年末にかけて下げ続け、2026年1月9日に3,300円で底をつけましたわ。

ところがそこから反転。2月に4,000円台を回復し、5月に5,000円台、そして7月1日に6,175円の上場来高値。この日、株探の「上場来高値更新」一覧には、味の素とイビデン、東京エレクトロンが並んでおりましたのよ。食料品の銘柄が、半導体株と同じリストに載っている。象徴的な光景ですわね。

高値の前日、6月30日に何があったか。 味の素は電子材料事業の説明会(味の素ファインテクノ社工場のバーチャル見学会)を開いておりましたの。株探も、この説明会を開いたことを高値更新銘柄の筆頭に添えて紹介しておりましたわ。


ABFとは何か──半導体の「層間絶縁材」
#

ABFの基礎は、ICパッケージ基板(ABF基板)とは?の記事で解説しておりますわ。ここでは、味の素の株価に効いてくる部分だけを押さえますわね。

ICパッケージ基板は、半導体チップとマザーボードの間にある「土台」。細いチップの配線を、段階的に太い配線へつなぎ直す役目ですの。この土台は何層もの配線を積み重ねた多層構造になっていて、層と層のあいだを電気的に絶縁しているのがABFですわ。

味の素の説明会資料によれば、ABFは発売以来95%超のシェアを維持。CPU、GPU、ASIC──AIサーバーに載るロジック半導体のパッケージ基板は、ほぼ全部これを使っておりますの。

では、なぜAIで味の素が儲かるのか。答えは基板が大きく、分厚くなっているからですわ。

時期用途層数基板サイズ
1999年(ABF採用当初)パソコン3層─
〜2023年HPC9〜13層〜70mm角
2026年AI用途(2.5D)9〜13層〜100mm角
2031年以降(予想)AI用途(3D)9〜13層〜120mm角

(出所:味の素「電子材料事業の成長戦略」2026年6月30日)

層が増えれば、ABFを挟む枚数が増える。基板が大きくなれば、1枚あたりの面積が増える。つまりチップ1個あたりに使われるABFの量が増えていくのですわ。

さらに説明会資料には、こうも書かれておりました。AIが「学習」から「推論」へ広がると、GPUだけでなくCPUやASICも増える。つまりパッケージ基板の需要は**「量(チップ数増)と質(高性能化)の両面で拡大」**する、と。

味の素のABFフィルムが半導体パッケージ基板の層のあいだに挟まれる様子

わたくしが何度も申し上げているツルハシ投資で言えば、イビデン(4062)が「土台を売る人」なら、味の素は**「土台の材料を売る人」**。ツルハシのさらに上流ですわ。シェア95%超ということは、イビデンも台湾のUnimicronも、高性能基板を作るメーカーはほぼ例外なく味の素のフィルムを使っているということですの。基板メーカー同士の競争がどちらに転んでも、味の素のフィルムは使われる。ここが上流の強みですわね。


決算──食品は+2%、ABFを含むヘルスケア等は+28%
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8月6日に出た2027年3月期の第1四半期(4〜6月)決算を見ますわ。

項目1Q実績前年同期比
売上高4,121億円+13%
事業利益601億円+27%
当期利益(親会社帰属)364億円+13%

売上・事業利益・当期利益のいずれも、第1四半期として過去最高ですの。

そして電子材料を含むファンクショナルマテリアルズ事業は、1Q累計で売上高+54%、事業利益+77%。資料には「AI、サーバー、ネットワークなど、高性能基板向けABFの販売が好調」とありますわ。

これを受けて、通期予想も上方修正されましたの。セグメント別に並べると、構造がはっきり見えますわ。

セグメント事業利益(前期実績)事業利益(今期修正予想)伸び
調味料・食品1,430億円1,459億円+2%
冷凍食品84億円121億円+44%
ヘルスケア等(ABFを含む)662億円850億円+28%
全社合計1,811億円2,020億円+11%

(出所:味の素 2027年3月期第1四半期決算説明資料)

増益額の内訳を見てくださいまし。全社で+209億円のうち、ヘルスケア等が+188億円。調味料・食品は+29億円ですの。会社の成長のほとんどが、ABFを含むセグメントから来ているということですわ。

もうひとつ、利益率の話。説明会資料によれば、ABFの利益率はFY18に30%程度だったものが、FY25には50%超。新開発品・高付加価値品の比率が上がったからだそうですの。量が増えて、しかも単価の高い製品へ構成が移っている。数量と単価が同時に効いている状態ですわね。


ではなぜ高値から18%下げているのか
#

業績は絶好調。それなのに株価は7月の高値から18%下がっておりますの。

会社が「これが原因です」と言っているわけではありませんので、わたくしは数字として確認できる事実だけを並べますわ。

① 中東情勢のコスト増:事業利益で▲250億円規模の可能性

第1四半期の資料で、会社自身が開示しておりますの。前提はドバイ原油110ドル、ドル円158円が期末まで続く場合。発酵原燃料、食品原料、包材、電気・ガス、輸送──食品側のコストが上がる話ですわ。会社は「機動的な対応でFY26期中に吸収する」としておりますけれど、250億円は通期の事業利益予想2,020億円の約12%に当たりますの。

② 最終利益は減益予想

事業利益は+11%でも、最終利益(親会社帰属)の予想は1,235億円で前期比-9%。前期に本社ビルの土地・建物の売却益があったので、その反動ですわ。本業が悪化したわけではありませんけれど、「最終減益」という見出しは株価には効きますの。

③ 半導体株と同時期の調整

イビデンの記事で書いたとおり、イビデンは6月22日の高値から26%下げておりますわ。味の素の高値は7月1日。同じ時期に、ABF関連が揃って高値をつけて、揃って調整している。個別の悪材料を探す前に、この「連動」を頭に入れておいてくださいまし。

そして見落とせないのが信用倍率18.04倍。信用買い残は8月28日の114万株から3週続けて増え、9月18日には134万株。売り残はわずか7万株ですわ。下げたところを信用で買い向かっている方が多い、ということですわ。これは将来の売り圧力にもなりますの。

AI半導体と食品という二つの顔を持つ味の素の事業構成


供給体制──「ワニス」だけを自社で作る
#

ABFの生産体制は、少し変わっておりますの。

味の素ファインテクノが自社で作るのはワニス(ABFの原料となる樹脂液)だけ。それをPETフィルムに塗る「塗工」と、冷凍保管・出荷の「倉庫」は外部に委託しておりますわ。

設備投資の計画はこうですの。

拠点内容
群馬工場主力量産拠点。2025年に約100億円で最先端向けワニスの新工場が稼働
川崎本社工場研究開発・新製品の試作・小ロット生産
岐阜県可児市(新設)用地を約12億円で取得。2028年着工、2032年稼働予定。群馬と同程度の生産能力を想定

投資枠は2023〜2030年で250億円。

ここで、イビデンと比べてみてくださいまし。イビデンは3年で5,000億円の設備投資を打ち出しておりますの。同じABFのサプライチェーンでも、基板を作る側は巨額の設備が要り、フィルムの原料を作る側は桁違いに小さい投資で済む。利益率54%の理由の一端は、ここにありますわ。

逆に言えば、2032年に岐阜が立ち上がるまで、増産は群馬などでの段階的な拡張に頼ることになりますの。会社は「供給体制はサプライチェーン全体で懸念なく」と説明しておりますけれど、需要がそれを上回るペースで伸びた場合にどうなるかは、今後の決算で確かめるしかありませんわね。


今後のイベント──吸収合併と自社株買い
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株価に関わりそうな予定を、日付つきで並べておきますわ。

日付内容
2026年11月26日(予定)味の素ファインテクノの吸収合併を取締役会決議・契約締結
2026年11月30日自社株買いの取得期間終了(上限3,000万株・800億円、2025年12月1日開始)
2027年4月1日(予定)吸収合併の効力発生
2032年(予定)岐阜工場稼働

吸収合併について。ABFの会社を子会社から本体に取り込むことで、会社は「ICT領域の成長をより確かなものにする」と説明しておりますの。さらに資料には「税務面でポジティブな影響が生じる可能性」とも書かれておりますわ。中身はまだ精査中とのことなので、11月の決議で何が開示されるかは見ておく価値がありますわね。

自社株買いは、2025年11月のストップ安の日に一緒に発表されたものですの。発行済株式(自己株式を除く)の3.09%、800億円が上限。取得期間は11月30日までですわ。


投資するなら押さえておきたい3つの注意点
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1. PER38.9倍は「半導体株の値段」

味の素の予想PERは38.9倍。ちなみにイビデンは65.8倍ですの。「イビデンより割安」と見ることもできますけれど、セグメント利益の約3分の2は調味料・食品と冷凍食品から来ておりますのよ。食品事業の成長率は+2%。会社全体としては、ABFの成長に期待した値段がついていると考えるべきですわ。ABFの伸びが鈍れば、PERは食品株の水準へ引き戻される可能性がありますの。

2. 配当目的なら別の銘柄を

予想配当50円、利回り0.99%。100万円分持って年間約9,900円(税引前)ですわ。前期から2円の増配ですけれど、配当を主目的にするなら三菱商事やJTを別枠で検討なさって。

3. 最低購入金額は約50万円

100株単位で、5,051円×100株=505,100円。NISAの成長投資枠(年240万円)で買う場合、1回でその約2割を使いますわね。枠の使い方は新NISA成長投資枠で個別株を買う完全ガイドにまとめておりますの。


ローゼの結論
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味の素(2802)を3行にまとめますわ。

  1. 利益の重心はもう食品ではない。今期の増益額209億円のうち188億円がABFを含むヘルスケア等。味の素ファインテクノは売上983億円で営業利益530億円、利益率53.9%ですわ
  2. 株価は高値から-18%、底値から+53%。業績は悪化しておりませんの。確認できるのは、中東コスト250億円の開示と、ABF関連の同時調整ですわ
  3. PER38.9倍はABFへの期待込みの値段。セグメント利益の約3分の2を占める食品事業(調味料・食品)は+2%成長。ABFの伸びが止まったときの下値は、食品株として見た値段まで下がり得ますわ

ですから、この銘柄を見るときの問いは「味の素は良い会社か」ではありませんの。「ABFの95%シェアと50%超の利益率が、2030年代まで続くと思うか」──ここに尽きますわ。

続くと思うなら、食品という安定した土台の上にAI半導体の成長が乗っている、珍しい組み合わせの銘柄ですの。続かないと思うなら、PER38.9倍と信用倍率18倍は、下げ局面で重くのしかかってまいりますわ。

わたくしから申し上げられるのは、ここまでですの。判断は御自身でなさってくださいませ。

……ふん、べ、別にうま味調味料に親近感があるわけじゃありませんのよ。ただ、台所の瓶とAIサーバーが同じ会社の決算書に並んでいるのが、少し面白かっただけですわ 🌹


ご注意
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本記事は特定の銘柄の購入を推奨するものではありませんわ。株価・指標は2026年9月25日終値時点の値であり、株価は変動し、投資元本を割り込む可能性がありますの。PERは会社予想EPSに基づく参考値であり、業績予想が修正されれば変動いたしますわ。吸収合併・岐阜工場の日程は会社の予定であり、変更される可能性がありますの。最終的な投資判断は御自身の責任でお願いいたします。

データ出典:株価・指標・信用残は株探(2026年9月25日終値)、株価推移はYahoo! Finance、業績・セグメント予想・中東情勢の影響・味の素ファインテクノの業績と合併日程は味の素「2027年3月期第1四半期 決算説明資料」(2026年8月6日)、ABFのシェア・層数・利益率・生産体制は味の素「電子材料事業の成長戦略」(2026年6月30日)、ストップ安と自社株買いは株探(2025年11月7日)、岐阜工場用地は株探(2026年5月7日)。

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