2026年6月25日、終値352.83ドル。2025年10月の高値542.07ドルから**−35%**。
世界で最も時価総額の大きい企業のひとつが、8か月で3分の1以上の値を失いましたわ。「生成AIがソフトウェアを食い尽くす」という不安が、SaaS銘柄をまとめて売り崩していた時期ですの。
ところが2026年9月23日の終値は500.59ドル。安値から**+41.9%、年初来でもプラスに戻っていますわ。マイクロソフト(ティッカー:MSFT)** に、この3か月で何が起きたのか。
結論から申し上げますと、きっかけは7月29日のFY2026第4四半期決算ですの。ただし、あの決算には株価を押し上げた数字と、まだ誰も答えを出していない数字が両方入っていましたわ。この記事では、その両方を5つの数字に分解して検証いたしますわね🌹
まず何が起きたのか|決算のたびに株価が大きく動いた1年#
MSFTの株価は、この1年の決算発表のたびにはっきり反応してきましたわ。
| 日付 | 出来事 | 終値(前日比) |
|---|---|---|
| 2025年10月28日 | 52週高値 | 542.07ドル |
| 2025年12月31日 | 2025年の大納会 | 483.62ドル |
| 2026年1月29日 | FY26 Q2決算の翌日 | 433.50ドル(−10.0%) |
| 2026年4月30日 | FY26 Q3決算の翌日 | 407.78ドル(−3.9%) |
| 2026年6月25日 | 52週安値 | 352.83ドル |
| 2026年7月30日 | FY26 Q4決算の翌日 | 451.10ドル(+15.5%) |
| 2026年9月23日 | 直近 | 500.59ドル |
2回続けて決算で売られた銘柄が、3回目で1日+15.5%。時価総額でいえば一晩で数千億ドル単位が戻った計算ですわ。
テクニカルの位置も確認しておきますの。50日移動平均は471.46ドル、200日移動平均は431.86ドル。株価は両方の上にあり、短期線が長期線を上回っている状態ですわ。6月までとはトレンドの向きが逆転していますの。
では、7月の決算で何がそこまで評価されたのか。数字を順に見てまいりますわ。
数字①:Azure成長率43%|「減速するはず」が加速した#
FY2026第4四半期(2026年4〜6月)の全体像はこちらですの。
| 項目 | 実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 900.1億ドル | +18% |
| 営業利益 | 406億ドル | +18% |
| 純利益(GAAP) | 358億ドル | +31% |
| EPS(non-GAAP) | 4.74ドル | +23% |
| Microsoft Cloud売上 | 593億ドル | +27% |
| Intelligent Cloud部門 | 393億ドル | +32% |
| Azureほかクラウドサービス | — | +43% |
市場予想はEPS4.24ドル、売上876.2億ドル(LSEG集計、CNBC報道)。EPSで約12%、売上で約24億ドル上回りましたわ。
ただ、株価を動かしたのはEPSではなくAzureの43%ですの。前四半期は40%、アナリスト予想も40%前後でしたわ。規模が大きくなれば成長率は落ちるのが普通ですが、Azureは逆に加速しましたの。
しかもAzureはFY2026通期で初めて売上1,000億ドルを突破(+41%)。この規模で40%超の成長を続けているクラウド事業は、他に見当たりませんわ。
さらに会社はFY2027第1四半期(7〜9月)のAzure成長率を**45%(恒常為替ベース)**と見込んでいますの。予想コンセンサスは41.4%でしたから、ガイダンスの段階でさらに加速を宣言した形ですわ。
数字②:受注残6,780億ドル|ただし約半分はOpenAI#
2つ目は、商業用の残存履行義務(commercial RPO)=契約済みでまだ売上になっていない金額ですの。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 商業用RPO(2026年6月末) | 6,780億ドル |
| 前年同期比 | +84% |
| 前四半期比 | +8% |
| 参考:FY2026通期売上 | 3,318億ドル |
受注残が年間売上の約2倍積み上がっていますの。数字だけ見れば、これほど先行きの見えやすい企業はありませんわ。
けれど、ここは慎重に読むべきところですの。マイクロソフトは2026年1月の時点で、当時の受注残6,250億ドルのうち約45%がOpenAI関連だと開示していますわ(CNBC報道)。ドイツ銀行のアナリストも「OpenAIとの関係に一定の集中リスクがある」と指摘していますの。
一方で、今回の前四半期比+8%については、会社側が**「AIモデル開発企業以外の顧客からの契約が牽引した」**と説明していますわ。集中度が下がり始めているのか、それとも一時的なのか。ここは次の決算でも確認が必要ですの。
受注残の中身が特定の顧客に偏る構図は、オラクルが受注残363%増でも株価が下落した件と同じ論点ですわ。マイクロソフトはオラクルより財務がはるかに厚いとはいえ、「受注残が大きい=安全」ではないことは覚えておいてくださいまし。

数字③:Copilot有料3,000万席|「AIで稼げるのか」への回答#
2026年前半、ソフトウェア株が売られた最大の理由は**「AIはコストを増やすが、売上にはならない」**という疑念でしたわ。詳しくは「SaaSは死んだ」論を検証した記事でまとめていますの。
マイクロソフトはこの問いに、席数という実数で答えましたわ。
| 指標 | 2026年4月時点 | 2026年7月時点 |
|---|---|---|
| Microsoft 365 Copilot 有料席数 | 2,000万席超 | 3,000万席超 |
| GitHub Copilot 利用者数 | — | 5,000万人 |
3か月で1,000万席の上積みですの。ナデラCEOは決算説明会で、数百社の法人顧客が上位プランの「E7」バンドルを数百万席単位で購入したことにも触れていますわ。
ただし、Productivity and Business Processes部門(Office・Dynamics・LinkedIn)全体の売上成長は**+14%**。Microsoft 365商用クラウドは報告ベース+14%(前年の一時要因を除けば+16%)ですの。Copilotの席数は急増しているのに、部門売上の伸びは加速していない——ここはまだ結論を出せない部分ですわ。
席数が売上に本格的に乗ってくるのか、それとも既存ライセンスの値引き込みで配られているだけなのか。次の決算でこの部門の成長率が15%を超えてくるかどうかが、ひとつの目安になりますの。
数字④:四半期の設備投資410億ドル|稼いだ現金がデータセンターに消える#
ここからが、まだ誰も答えを出していない部分ですわ。
| 項目 | FY2026 Q4 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 設備投資(ファイナンスリース含む) | 410億ドル | +69% |
| フリーキャッシュフロー | 196.4億ドル | −23% |
| 株主還元(配当+自社株買い) | 102億ドル | — |
営業利益は406億ドル出ているのに、ほぼ同額がデータセンターとGPUに投じられていますの。その結果、**利益は+18%なのにフリーキャッシュフローは−23%**という、ちぐはぐな決算になっていますわ。
エイミー・フッドCFOは、2026年の設備投資計画を維持したうえで、会計処理の変更(データセンター建物の耐用年数を15年→25年に延長、将来のリースの多くをオペレーティング・リース扱いにする)を反映すると、設備投資とファイナンスリースで約1,750億ドル規模になると説明していますわ(CNBC報道)。さらにFY2027も設備投資は増えるとの見通しですの。
耐用年数を延ばすと、1年あたりの減価償却費は小さくなりますわ。つまり同じ投資額でも、損益計算書上の利益は目減りしにくくなるのですの。会計ルールの範囲内の変更ですが、今後EPSを見るときには**「減価償却の前提が変わった」**ことを差し引いて読む必要がありますわ。
AI設備投資の恩恵を受ける側——半導体や冷却、電力インフラの企業——から見れば、この1,750億ドルは売上そのものですの。投資する側と受け取る側、どちらの株を持つかで見える景色がまったく違いますわ。

数字⑤:PER約29倍・配当利回り0.78%|いまの値段をどう読むか#
最後にバリュエーションですわ。2026年9月23日終値500.59ドルで計算いたしますの。
| 指標 | 数値 | 計算根拠 |
|---|---|---|
| 実績PER(non-GAAP) | 約29.0倍 | FY2026 EPS 17.28ドル |
| 実績PER(GAAP) | 約27.9倍 | FY2026 EPS 17.95ドル |
| 年間配当(新水準) | 3.92ドル | 四半期0.98ドル×4 |
| 配当利回り | 約0.78% | — |
| 増配率 | +8% | 0.91ドル→0.98ドル |
GAAPとnon-GAAPの差は、主にOpenAIへの投資に関する損益ですの。FY2026 Q4では、別途Anthropicへの投資で32億ドルの評価益も計上されていますわ。AI企業への出資が、本業とは別のところで利益を上下させる構造になっていますの。
配当は2026年9月15日に四半期0.98ドルへの8%増配が発表されましたわ。権利落ち日は2026年11月19日、支払日は12月10日ですの。利回り0.78%は配当目的で持つ水準ではありませんが、増配を続けながら年間1,750億ドル規模の投資をこなしているという財務の厚みの証拠にはなりますわ。
PER29倍は、6月の安値時点(同じEPSで約20倍)と比べれば明らかに割安感は薄れていますの。「安いから買われた」局面は、もう終わっていると見るのが自然ですわ。ここから先の株価は、Azureの成長率が45%前後を維持できるかどうか、つまり業績そのもので決まる段階に入りましたの。
次の決算で見るべき3つのポイント#
FY2027第1四半期(2026年7〜9月)の決算は、例年どおりなら10月下旬に発表されますわ。会社のガイダンスは売上898.5〜909.5億ドル(中央値で+16%)ですの。
1. Azureが45%に届くか
会社自ら「加速」を宣言した数字ですわ。ここを下回ると、7月の+15.5%を支えた前提がそのまま崩れますの。
2. 受注残に占めるOpenAI比率が下がっているか
前四半期比の伸びが「AIモデル開発企業以外」から来ているなら、集中リスクは薄まっていますわ。会社の説明の仕方に注目してくださいまし。
3. フリーキャッシュフローの底打ち
CFOはFY2027のフリーキャッシュフローについてプラスを維持する見通しを示していますわ。裏を返せば、それ以上の約束はしていませんの。設備投資の伸びが売上の伸びを上回り続ける限り、FCFは圧迫され続けますわ。
まとめ|「AIで稼げるか」の答えは出た。残るのは「いくらかかるか」#
| 論点 | 現状 |
|---|---|
| 株価 | 500.59ドル。6月安値352.83ドルから**+41.9%**、高値542.07ドルまで−7.7% |
| 成長 | Q4売上+18%、Azure +43%(前期40%)、次期ガイダンス45% |
| 受注残 | 6,780億ドル(+84%)。ただし1月時点で約45%がOpenAI関連 |
| AI収益化 | Copilot有料3,000万席、GitHub Copilot 5,000万人 |
| 投資 | 四半期設備投資410億ドル(+69%)、FCF**−23%** |
| バリュエーション | 実績PER約29倍(non-GAAP)、配当利回り約0.78% |
| 株主還元 | 8%増配(四半期0.98ドル)、権利落ち11月19日 |
2026年前半のマイクロソフトは、「AIに巨額を投じているのに、それが売上になるのか分からない」という疑いで売られましたわ。7月の決算は、その疑いにAzure 43%とCopilot 3,000万席という実数で答えましたの。株価の+42%は、その答えへの評価ですわ。
けれど、答えが出たのは半分だけですの。「AIで稼げるか」には答えたが、「そのためにいくらかかり続けるのか」にはまだ答えていませんわ。利益+18%に対してFCF−23%という数字が、その未解決の部分をそのまま映していますの。
ふん、べ、別に「もう安心ですわ」なんて申し上げるつもりはありませんのよ。52週安値から4割戻した銘柄に、いまから「割安」という言葉は使えませんもの。ただ、この会社を判定する物差しがはっきりしたのは確かですわ。Azureの成長率と、フリーキャッシュフロー。この2つを決算のたびに並べていけば、株価の上げ下げに振り回されずに済みますの。
AIへの投資を「受け取る側」の銘柄に興味がある方は、AI半導体関連の銘柄マップも合わせてご覧くださいまし。……わたくしが丁寧にまとめたのですから、読まないと損ですわよ🌹
参考データ出典: Microsoft Investor Relations(FY2026第4四半期決算・2026年7月29日発表)、Microsoft Source(2026年9月15日 増配発表)、CNBC(市場予想・設備投資・ガイダンス・OpenAI関連受注残の報道)。株価・移動平均は2026年9月23日終値時点(Yahoo Finance日足データより算出)。PER・配当利回りは同終値と会社発表のEPS・配当額から算出した参考値ですわ。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありませんわ。株価は変動し、投資元本を割り込む可能性がございます。米国株は為替変動の影響も受けますの。投資判断はご自身の責任でお願いいたしますわね。






