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イビデン(4062)株価分析|1年で5倍になったABF基板株が、高値から26%下げている理由
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イビデン(4062)株価分析|1年で5倍になったABF基板株が、高値から26%下げている理由

··5628 文字·12 分

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ローゼンマイヤー
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ローゼンマイヤー
AI・米国株・ETFの投資リサーチブログ。企業IR・決算資料・公的統計などの一次情報にあたり、AIインフラを支える「ツルハシ銘柄」を中心に分析しています。

1年前、この株は3,981円でしたの。

2026年9月18日の終値は19,555円。ちょうど5倍ですわ。

……なのに、同じ株が6月につけた高値からは26%下げております。しかも8月の決算では、通期の経常利益予想が41%も上方修正されたばかりですのよ。

イビデン(4062)の話ですわ。岐阜県大垣市の、ICパッケージ基板の会社。

「業績が上がったのに株価が下がる」という、投資を始めたばかりの方が最初につまずく現象。今日はこれを、イビデンという具体的な1社で解剖してまいりますわ。ついでに、9月30日に控えている株式分割の話も。これ、買おうか迷っている方には結構大きな数字が動きますの。


まず数字から──1年で+391%、それでも高値からは-26%
#

感想の前に、実測値を置きますわ。すべて2026年9月18日の終値ベースですの。

項目数値
株価(9/18終値)19,555円
前日比+1,080円(+5.85%)
1年前(2025/9/18)3,981円 → +391.2%
52週高値(2026/6/22)26,425円 → -26.0%
時価総額5兆5,464億円
発行済株式数283,631,413株
PER(会社予想)65.8倍
PBR9.65倍
配当利回り0.18%
信用倍率3.92倍

1年で5倍。これはもう、AI相場の恩恵を思いきり受けた銘柄ですわね。200日移動平均線からは**+43.7%**上に位置しておりますの。長期のトレンドは明確に上向きですわ。

ところが期間を切り替えると、景色が変わりますの。

期間起点の終値9/18終値騰落
6ヶ月(3/18)8,481円19,555円+130.6%
3ヶ月(6/22)26,425円19,555円-26.0%
1ヶ月(8/21)19,190円19,555円+1.9%
1週間(9/11)19,560円19,555円-0.0%

6ヶ月で見れば倍以上。3ヶ月で見れば4分の1が吹き飛んでいる。1ヶ月と1週間で見れば、ほぼ動いていない。同じ株の、同じ日の話ですのよ。

ちなみに9月18日の**+5.85%**という急騰ですけれど、これはイビデン固有の材料ではありませんわ。同じ日、東京エレクトロンは+4.20%、アドバンテストは+5.99%、ディスコは+3.62%、レーザーテックは+8.70%。半導体セクターが丸ごと買われた日ですの。個別株の値動きを見るときは、その日にセクター全体がどう動いたかを必ず確認なさって。でないと、無い材料を探して勝手にストーリーを作ってしまいますわ。


そもそも何を作っている会社なのか──ABF基板という「土台」
#

株価の話の前に、この会社が何屋さんなのかを押さえておきますわね。

イビデンの主力はICパッケージ基板。もう少し噛み砕くと、**半導体チップを載せる「土台」**ですの。

NVIDIAのGPUにせよ、サーバー用CPUにせよ、チップの中は髪の毛の数千分の一という細さで配線されておりますわ。でも基板から外の世界へ出るときの配線は、それよりずっと太い。この細さの落差を、段階的につなぎ直すのがパッケージ基板の仕事ですの。

「土台」と言うと地味に聞こえますけれど、AI半導体が高性能になるほど、載せるチップは大きく、配線の本数は増え、発熱も増える。土台側の要求水準は跳ね上がりますの。特に高性能サーバー向けのABF基板(味の素ビルドアップフィルムを使う多層基板)は、作れる会社が世界でごく限られておりますわ。株探の会社概要でも、イビデンは「ICパッケージ、プリント配線板で首位級」と紹介されておりますの。

AI半導体の土台となるICパッケージ基板

わたくしがこのブログで何度も申し上げているツルハシ投資──ゴールドラッシュで儲けたのは金を掘った人ではなくツルハシを売った人、という考え方ですけれど、イビデンはその典型ですわ。

しかも面白いのは、ツルハシにも階層があるということですの。

AIデータセンターという1つのブームに、これだけの「ツルハシ層」がぶら下がっておりますの。銘柄マップはAI半導体銘柄の地図にまとめてありますわ。

なお、イビデンは電子部材だけの会社ではありませんの。自動車の排ガス浄化用セラミックスも大手ですわ。ただ、いまの株価を動かしているのが電子事業なのは間違いありませんの。


業績は、むしろ絶好調ですのよ
#

ここが今日いちばん大事なところですわ。「株価が下がった=業績が悪化した」ではありませんの。イビデンの業績は、上方修正されております

2026年8月4日に発表された2027年3月期 第1四半期(4-6月)の実績がこちらですわ。

項目25年4-6月26年4-6月前年同期比
売上高974.64億円1,232.19億円+26.4%
営業利益176.36億円268.80億円+52.4%
経常利益174.07億円274.66億円+57.8%
最終利益127.28億円179.18億円+40.8%
売上営業利益率18.1%21.8%+3.7pt

売上が+26%伸びるあいだに、営業利益は+52%伸びておりますの。利益率が18.1%から21.8%へ改善している。これは値上げが通っているか、単価の高い製品の比率が上がっているか、稼働率が上がっているか──いずれにせよ良い増え方ですわ。

そして会社は同じ日、通期予想を引き上げましたの。

2027年3月期 通期旧予想(5/11)新予想(8/4)修正率
売上高5,000億円5,500億円+10.0%
営業利益900億円1,270億円+41.1%
経常利益900億円1,270億円+41.1%
最終利益580億円840億円+44.8%
1株利益205.17円297.14円+44.8%

前期(2026年3月期)の経常利益が608億円でしたので、今期予想は2.1倍。4期ぶりの過去最高益を、さらに上乗せした格好ですわ。

……業績はこれ。株価は高値から-26%。この矛盾をどう説明するかが、今日の本題ですの。


答え:業績が悪くなったのではなく、期待が先に行きすぎていた
#

PER(株価収益率)で見ると、話は一気に単純になりますわ。

9月18日時点のPERは65.8倍。会社予想EPSの297.14円に対する株価19,555円、という計算ですの。

では6月22日の高値26,425円のとき、PERはいくつだったか。同じEPSで割ると──約88.9倍ですわ。

つまり6月の高値というのは、「いまの利益の89年分」を先払いしても買いたいという熱量でつけた値段。そこから26%下がって、ようやく「66年分」になった。この3ヶ月で起きたのは、業績の悪化ではなくバリュエーションの正常化ですの。

同業他社と並べると、まだ高いということも見えてまいりますわ(すべて2026/9/18終値)。

銘柄株価PERPBR時価総額
イビデン(4062)19,555円65.8倍9.65倍5兆5,464億円
アドバンテスト(6857)32,050円35.1倍22.19倍23兆4,606億円
レーザーテック(6920)39,090円38.9倍14.19倍3兆6,857億円
ディスコ(6146)52,420円9.79倍5兆6,888億円
東京エレクトロン(8035)53,110円11.34倍24兆8,572億円

※印は株探で会社予想PERが表示されていない銘柄ですの。

AI相場の主役級であるアドバンテストやレーザーテックが35〜39倍のところ、イビデンは65.8倍。同じセクターの中でも、イビデンにはまだ厚めの期待が乗っているということですわ。

業績は上向き、株価は調整というギャップ

ここから導ける読み方は2つ。

強気に読むなら──「利益が伸び続ければ、PERは自然に下がる」。EPSが297円から仮に450円まで伸びれば、株価が今のままでもPERは43倍まで落ちますの。成長株のPERは、株価が下がるか利益が伸びるかのどちらかで解消されますわ。

慎重に読むなら──「65.8倍は、成長が続くことを前提にした値段」。1四半期でも失速すれば、PERの前提そのものが崩れますの。信用倍率3.92倍(買い203.8万株 vs 売り52.0万株)という需給も、下げ局面では重しになりますわ。買い残は、いつか売られる株ですのよ。


5,000億円という賭け
#

PERの話をもう一段深くしますわね。イビデンが高いPERを許されている理由は、将来の生産能力にありますの。

2026年2月3日、イビデンは正式にこう発表しておりますわ(会社プレスリリースより)。

2030年度目標の達成に向け、2026年度から2028年度の3ヶ年で電子事業への、総額約5,000億円規模の投資計画を決議いたしました

その第1フェーズが、岐阜県大垣市の河間事業場(Cell6)を中心とした約2,200億円の設備投資。稼働は2027年度から順次、量産開始という計画ですの。

これ、時価総額5.5兆円の会社が3年で5,000億円を投じる話ですから、相当な規模ですわ。しかもリリースにはこう書いてありますの。

河間事業場工場棟は2023年度に竣工し、量産稼働は大野事業場を先行して進めてきましたが、この度、顧客と方向性を合意し、改めて量産稼働に向けた設備投資を進めてまいります

顧客と方向性を合意し」──つまり、作ってから売り先を探すのではなく、買い手を確保してから増設しているという意味ですわ。2023年に建てた工場棟を寝かせていたのを、いま動かす。需要の確度は高いと読めますの。

ただし、設備投資には必ず裏の顔がありますわ。減価償却費ですの。5,000億円を投じれば、稼働後は毎年数百億円規模の固定費が新たに乗りますの。需要が読み通りなら利益は跳ねますけれど、AIサーバーの投資サイクルが一巡したとき、その固定費は逃げてくれませんわ。

半導体は歴史的に、好況期の増産が次の不況を深くする業界ですのよ。イビデンの5,000億円が果実になるのか重荷になるのかは、2027年度以降の需要次第。ここは、誰にも断定できませんわ。


9月30日の株式分割で、買うのに必要な金額が半分になりますの
#

最後に、いま買おうか迷っている方に直接効いてくる話を。

イビデンは2026年9月30日割当で、1株を2株にする株式分割を実施いたしますわ(8月4日の決算発表と同時に公表)。

これが何を意味するかというと──

項目分割前分割後(理論値)
株価19,555円約9,778円
単元株数100株100株
最低購入代金約195万5,500円約97万8,000円

分割前は、100株買うのに195万円必要でしたの。新NISAの成長投資枠が年間240万円ですから、1銘柄で枠の8割を持っていかれる計算ですわ。これはさすがに手が出しにくいですわよね。

分割後は約98万円。それでも安くはありませんけれど、「枠の4割」なら検討の俎上に載る方は一気に増えますの。分割は企業価値を1円も変えませんが、買える人の数を変えるのですわ。

配当についても補足しておきますわね。会社は年間配当計画を35円から25円に修正しておりますけれど、これは減配ではありませんの。分割前換算では35円のままで、実質の配当額は変わりませんわ。分割のタイミングで単純に半分にならないのは、分割前の中間配当分が含まれるためですの。

ただ正直に申し上げますと、配当利回りは0.18%ですのよ。100万円分持っていても年1,800円。この銘柄は配当で持つ株ではありませんわ。値上がり益を狙う株ですの。配当を目的になさるなら、三菱商事JTのような銘柄を別枠で考えるべきですわ。なお、イビデンの株主優待はすでに廃止されておりますので、優待目当ての購入も対象外ですの。

※権利付最終日の具体的な日付は、必ずご利用の証券会社の案内でご確認くださいませ。分割の基準日と、売買の受渡日は別物ですのよ。


ローゼの結論
#

イビデン(4062)を3行にまとめますわ。

  1. 業績は本物。1Q営業利益+52.4%、利益率21.8%、通期経常を41%上方修正して前期比2.1倍。数字は疑う余地がありませんわ
  2. 株価が下げたのはPERの正常化。高値時88.9倍→現在65.8倍。業績悪化ではなく、期待の先行が剥がれただけですの
  3. それでも同業比では割高。アドバンテスト35.1倍・レーザーテック38.9倍に対し65.8倍。成長が続く前提の値段ですわ

ですから、この銘柄を見るときの問いは「安いか高いか」ではありませんの。「5,000億円の投資が回収できるほど、AIサーバーの需要は続くと思うか」──ここに尽きますわ。

続くと思うなら、9月30日の分割で最低購入代金が半分になるのは追い風ですの。続かないと思うなら、PER65.8倍と信用買い残203万株は、下げ局面でかなり効いてまいりますわ。

わたくしから申し上げられるのは、ここまでですの。判断は御自身でなさってくださいませ。

……ふん、べ、別に心配しているわけじゃありませんのよ。ただ、5倍になった株を「まだ上がる」と思って高値で掴む方が毎回いらっしゃるものですから、数字だけは正確にお渡ししておきたかっただけですわ 🌹


ご注意
#

本記事は特定の銘柄の購入を推奨するものではありませんわ。株価・業績数値は2026年9月18日終値および2026年8月4日公表の決算短信・2026年2月3日公表のプレスリリースに基づいております。株価は変動し、投資元本を割り込む可能性がありますの。PERは会社予想EPSに基づく参考値であり、業績予想が修正されれば変動いたしますわ。株式分割の権利付最終日・配当の詳細は必ず証券会社および会社公式IRでご確認のうえ、最終的な投資判断は御自身の責任でお願いいたします。

データ出典:株価・指標は株探(2026年9月18日終値)、業績は2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月4日)、設備投資計画はイビデン公式プレスリリース(2026年2月3日)。

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