「VPNはもう時代遅れ」——そう言い切る企業が**Zscaler(ティッカー:ZS)**ですわ。社員一人ひとりを「信頼しない」前提でアクセスを制御する「ゼロトラスト」というセキュリティ思想を、クラウド上のサービスとして提供する会社ですの。生成AIエージェントが社内システムに次々アクセスするようになった今、この会社の存在感がどう変わってきているのか、直近決算をもとに数字で見ていきますわよ。
Zscalerとは?基本をおさえる#
Zscalerは2007年創業、CEOのJay Chaudhry氏が「クラウド時代のセキュリティは境界防御ではなく、ユーザーとアプリを直接つなぐべき」という発想で立ち上げた会社ですわ。従来型のファイアウォールやVPNのように「社内ネットワークに入れば信頼する」のではなく、すべてのアクセスを都度検証するゼロトラストアーキテクチャをクラウド経由で提供するのが特徴ですの。
主要プロダクト#
| プロダクト | 概要 |
|---|---|
| Zscaler Internet Access(ZIA) | 社員のインターネットアクセスをクラウド経由で検査・保護 |
| Zscaler Private Access(ZPA) | VPNに代わる、社内アプリへのゼロトラストアクセス |
| Zero Trust SASE | ネットワークとセキュリティを統合したクラウド型アーキテクチャ |
| AI Zero Trust for Agents | AIエージェントの社内アクセスを制御する新領域 |
| Red Canary(買収) | マネージド検知・対応(MDR)サービス |
VPNのように「一度つながれば社内ネットワーク全体が見える」状態を避け、必要なアプリだけに直接つなぐことで、万一侵入されても被害が横に広がらない(ラテラルムーブメントを防ぐ)のが最大の売りですわ。
AI時代の新たな脅威にどう向き合うか#
1. AIエージェントという新しい「ユーザー」#
これまでゼロトラストが守る対象は「人間の社員」が中心でしたわ。ところが2026年に入り、企業内では生成AIエージェントが自律的に社内システムへアクセスし、タスクを実行するケースが急増していますの。CEOのJay Chaudhry氏は直近決算のQ&Aで、AIモデル(Mythosなど新興AIサービス)にまつわる脆弱性への顧客の関心が急速に高まっていると明言していますわ。企業は「このAIエージェントは、どのデータに、どこまでアクセスしてよいのか」という新しい統制課題に直面していて、ZscalerはここにAI Zero Trust for Agentsという形で入り込もうとしていますの。
2. デセプション技術で「侵入後」に備える#
面白いのは、CEOが「Zero Trustアクセス」と並んで「デセプション技術」への関心の高まりを挙げている点ですわ。デセプションとは、攻撃者やAIエージェントの誤動作をおびき寄せる"おとり"を仕込み、異常な挙動を早期に検知する手法。侵入を100%防ぐのは不可能という前提に立ち、「入られた後」にどう気づき、どう封じ込めるかという発想が、AIエージェント時代のセキュリティでは重要になってきていますわ。
3. クラウドマーケットプレイス経由の成長#
もう一つの成長エンジンが、AWSやAzureなどのクラウドマーケットプレイス経由での契約ですの。年初来の取引総額(TCV)は約9億ドルと、前年比で2倍以上に拡大していますわ。企業が既存のクラウド予算枠(コミット消化)を使ってセキュリティ製品を購入する動きが広がっており、営業サイクルの短縮にもつながっていますの。

直近決算をチェック(2026年5月発表・FY2026 Q3)#
| 指標 | 実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 8.50億ドル | +25% |
| ARR(年間経常収益) | 35億ドル | +25% |
| 純増ARR | 1.66億ドル | +24% |
| 非GAAP営業利益率 | 23%(過去最高) | — |
| 非GAAP粗利率 | 80.7% | 前年80.3%から改善 |
| フリーCF率(当期) | 16% | — |
| 年間経常収益100万ドル超の顧客数 | 748社 | +18% |
| RPO(残存履行義務) | 65億ドル | +30% |
売上成長率25%、営業利益率23%(過去最高)と、成長と収益性を両立させているのが数字上の強みですわ。RPOが売上の伸びを上回る+30%で増えている点は、将来の受注残がしっかり積み上がっていることを示していますの。
懸念点も存在する#
一方で手放しには喜べない材料もありますわ。
- 営業組織のリーダー turnover:CRO配下の幹部2名が退任。後任は内部登用で進めているものの、短期的な営業実行への影響を会社側も警戒
- 新規ロゴ(新規顧客)獲得の鈍化:既存顧客のアップセルは堅調な一方、新規顧客開拓ペースは会社側が「抑制的」と表現
- 欧州の成長鈍化:他地域に比べEMEAの実行力に課題
- CapEx増加:メモリ・プロセッサ価格の上昇を受け、価格が上がる前に投資を前倒し。FY2026のCapExは売上比で高めの一桁%に
FY2026通期ガイダンスは売上高33.30億〜33.33億ドル(前年比+24.6〜24.7%)、フリーCF率22.8〜23.3%と、依然として力強い数字を掲げていますの。

バリュエーションと株価動向#
株価は52週高値337ドルから114ドルまで大きく調整し、直近は177ドル付近で推移していますわ(2026年8月時点)。決算後の値動きは、力強い数字と裏腹に、営業組織turnoverや新規ロゴ鈍化への警戒感から神経質な展開が続いていますの。
高成長のSaaS・セキュリティ銘柄らしく株価変動は大きめですが、ARR350億ドル、25%成長、営業利益率過去最高という土台があるだけに、短期の株価下落を「成長ストーリーの終わり」と即断するのは早計かもしれませんわ。むしろAIエージェントの社内浸透という新しいテーマへの対応力が、次の成長フェーズを左右しそうですの。
個人投資家が押さえておくべきポイント#
- ゼロトラストは「トレンド」から「標準」へ:VPNの限界が明らかになる中、大企業のITインフラ刷新の中核にゼロトラストが位置づけられつつありますわ
- AIエージェントセキュリティは次の成長ドライバー候補:まだ収益への寄与は限定的(会社側もFY27での効果発現を想定)だが、先行者としてのポジション取りが進行中
- 営業体制の立て直しが当面の注目点:リーダーturnoverの影響が業績にどう出るか、次の四半期決算で確認したいところ
- 高成長×高収益性の両立銘柄:営業利益率23%という水準は、赤字覚悟で成長を追うSaaS企業とは一線を画す財務体質
サイバーセキュリティ関連株は、AIによる脅威の高度化と、AIによる防御の両面から今後も投資テーマとして注目され続けそうですわ。同じくAI時代のセキュリティ銘柄としてCrowdStrike(CRWD)の分析記事も参考になさってくださいまし。個別銘柄が気になる方は、分散投資できるサイバーセキュリティETF(HACK・CIBR・BUG)の比較ガイドもあわせてご覧くださいまし。個別銘柄への投資はボラティリティの大きさも踏まえ、ポートフォリオ全体でのバランスを考えながら検討してくださいまし。
免責事項:本記事は情報提供を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってくださいますよう、お願いいたしますわ。






