AIブームで注目される銘柄といえば、NVIDIAやMicrosoftなどのテック大手を思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし、本当に恩恵を受けているのは「ツルハシ」を売る企業です。
ゴールドラッシュで最も確実に儲かったのは金を掘る人ではなく、ツルハシやジーンズを売った人だった――この歴史的教訓は、AI時代にもそのまま当てはまります。
今回は、AIインフラの「血管」とも言える電線・ケーブル業界に注目し、なぜ今この業界が爆発的に成長しているのかを解説します。
電線御三家+SWCC 銘柄比較テーブル#
| 銘柄 | コード | 市場 | AI感応度 | 主な強み | こんな人向け |
|---|---|---|---|---|---|
| フジクラ | 5803 | 東証プライム | 非常に高い | 超多心光ファイバー・光コネクタ | AI成長に全力で乗りたい |
| 住友電工 | 5802 | 東証プライム | 高い(多角化) | ワイヤーハーネス・光ファイバー・電力ケーブル | 安定配当+AI恩恵のバランス |
| 古河電工 | 5801 | 東証プライム | 中〜高(出遅れ) | 海底ケーブル・超電導技術 | バリュー狙い・出遅れ修正 |
| SWCC | 5805 | 東証プライム | 非常に高い(小型) | 光ファイバー7倍増産計画・ROIC経営 | ハイリスク・ハイリターン |
なぜ電線・ケーブルがAI時代に重要なのか?#
データセンターは、AIの「頭脳」を支える巨大な施設です。その内部では数万本もの光ファイバーケーブルがサーバー間を結び、膨大なデータを超高速で伝送しています。
さらに、AI用GPUは従来サーバーの3〜4倍の電力を消費します。NVIDIAの最新GPU「Blackwell B200」の消費電力は最大1,200Wにも達し、これらに電力を届ける電力ケーブルの需要も急増しています。
つまり、電線・ケーブル企業は**「光(通信)」と「電力」の両面**でAIインフラに不可欠な存在なのです。
データセンター投資の規模感#
- Microsoft:2025年度だけで約800億ドル(約12兆円)のデータセンター投資を計画
- Google、Amazon、Meta:各社も数兆円規模の投資を継続
- 国際エネルギー機関(IEA)の試算では、データセンターの電力消費量は2026年に2022年比で約2.2倍に
この天文学的な投資の恩恵を最も直接的に受けるのが、電線・ケーブルメーカーです。
「電線御三家」とは?#
日本の電線業界には**「電線御三家」**と呼ばれる3つの大手企業があります。
| 企業名 | 証券コード | 特徴 |
|---|---|---|
| フジクラ | 5803 | 光ファイバー・コネクタでAI特需の恩恵大 |
| 住友電工 | 5802 | 売上4兆円超の総合電線メーカー、自動車向けも強い |
| 古河電工 | 5801 | 光配線部材・超電導技術に強み |
加えて、近年注目度が急上昇しているのが**SWCC(5805)**です。
それぞれの企業の特徴と強みを見ていきましょう。
フジクラ(5803):AI特需で最も恩恵を受ける電線株#
フジクラは、電線御三家の中で最もAI・データセンター関連の比率が高い企業です。
強みのポイント#
- 超多心光ファイバーケーブル:1本のケーブルに数千本の光ファイバーを束ねる技術で世界トップクラス
- 光コネクタ:データセンター内部の接続に欠かせない部品で高シェア
- 「細さ」が武器:限られたスペースに大量のケーブルを敷設できる超高密度ケーブルが、データセンターの設計要件に合致
業績推移#
2026年3月期第3四半期決算では:
- 売上高:8,549億円(前年同期比+20.2%)
- 営業利益:1,422億円(前年同期比+47.7%)
- 通期売上予想を1兆1,430億円に上方修正
営業利益率は約16%に達しており、電線業界としては異例の高収益です。
株価も2024年初頭から大幅に上昇しましたが、データセンター建設ラッシュが2020年代後半まで続くと見込まれるため、成長ストーリーは道半ばという見方もあります。
住友電工(5802):安定感抜群の総合電線メーカー#
住友電工は、売上高4兆円を超える日本最大の電線メーカーです。
強みのポイント#
- ワイヤーハーネス(自動車用電装品)で世界トップクラスのシェア
- 光ファイバー、電力ケーブル、超硬工具など多角的な事業ポートフォリオ
- GaN(窒化ガリウム)パワー半導体の研究開発でも先行
投資家にとっての魅力#
フジクラほどの爆発力はないものの、安定した配当とディフェンシブ性が魅力です。AI一本足ではないため、AI投資が減速した場合のリスクヘッジにもなります。
「攻めのフジクラ」「守りの住友電工」と覚えておくとわかりやすいでしょう。
古河電工(5801):構造改革で変貌する老舗#
古河電工は、1884年創業の名門企業。近年は構造改革を進め、収益力の改善が進んでいます。
強みのポイント#
- 海底ケーブル:洋上風力発電やデータセンター間の海底光ケーブルで実績
- 超電導ケーブル:次世代の電力伝送技術で世界をリード
- データセンター向け光配線部材のラインナップ拡充
注目される理由#
電線御三家の中では株価の出遅れ感があり、バリュー投資の観点から注目する投資家が増えています。構造改革の成果が本格的に業績に反映されるかが今後のポイントです。
SWCC(5805):第4の電線株として急浮上#
旧・昭和電線ホールディングスから社名変更したSWCCは、**「光と電力の二刀流」**として注目度が急上昇中です。
強みのポイント#
- SICONEX(高性能電力接続技術)で電力インフラに強固な基盤
- 光ファイバー生産能力を2030年度までに2025年度比7倍に増産する計画を発表
- ROIC経営を導入し、資本効率を重視した経営改革を推進
時価総額は電線御三家に比べて小さく、成長余地が大きい点が投資家の注目を集めています。
アメリカの電線・ケーブル関連株はどれ? ── 米国上場で狙える銘柄#
「電線株=日本株」と思われがちですが、AIデータセンターの建設量が最も多いのは米国です。米国上場銘柄も押さえておくと、投資の選択肢が一気に広がります。
主要な米国・欧州上場の電線ケーブル関連銘柄#
| 銘柄 | ティッカー | 上場市場 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| Prysmian | PRY | ミラノ | 世界最大の電線メーカー。2024年に米エンコア・ワイヤーを買収し北米事業を大幅強化 |
| Nexans | NEX | パリ | 欧州大手。海底ケーブル・送電網に強み |
| Corning | GLW | NYSE | 光ファイバーの世界的リーダー。データセンター向け光接続で直接的な恩恵 |
| Amphenol | APH | NYSE | 高速コネクタ・ケーブルアセンブリ。AIサーバー内配線の主要サプライヤー |
| Belden | BDC | NYSE | 産業用・ネットワーク用ケーブル |
| Atkore | ATKR | NYSE | 電線管(コンジット)・電気設備資材 |
| Coherent | COHR | NYSE | 光トランシーバー。データセンター間の光通信に不可欠 |
このうち、AIデータセンター需要との連動が最も分かりやすいのは Corning(光ファイバー) と Amphenol(高速コネクタ) です。どちらもサーバー筐体の内外で「データを運ぶ物理層」を握っており、GPU出荷量の増加がそのまま数量増につながる構造にあります。
なお、かつて米国の電線株として人気だったエンコア・ワイヤー(旧WIRE)は2024年にPrysmianに買収され、単独では上場していません。古い記事を参考にする際はご注意ください。
ETFでまとめて買う選択肢#
個別銘柄を選びきれない場合、電力インフラ・送配電関連をまとめたETFという手もあります。
- GRID(First Trust Nasdaq Clean Edge Smart Grid Infrastructure Index Fund):送配電網・スマートグリッド関連の詰め合わせ
- PAVE(Global X U.S. Infrastructure Development ETF):米国インフラ建設全般。電気設備メーカーを広く含む
ETFなら1銘柄の業績ミスによる打撃を分散できますが、その分「電線特需」を直撃で取りにいく効果は薄まります。
日本の電線株と米国株、どちらを選ぶべき?#
| 観点 | 日本の電線御三家 | 米国・欧州の関連株 |
|---|---|---|
| 需要地 | 日本+輸出(海外売上比率は高い) | 米国内のデータセンター建設に直結 |
| 為替の影響 | 円安が追い風(輸出採算改善) | 円安だと購入時の円建てコストが上昇 |
| 情報の取りやすさ | 決算資料が日本語で読める | 英語のIR資料が中心 |
| NISA | 成長投資枠で購入可 | 成長投資枠で購入可 |
| 株価の割安感 | PBR改善余地が残る銘柄が多い | 期待を織り込み高めの評価 |
結論としては「両方を少しずつ」が現実的です。 日本の電線株は光ファイバー・海底ケーブルという世界シェア上位の武器を持ち、米国株は建設需要そのものの伸びを取りにいけます。どちらか一方に絞る必然性は薄いでしょう。
電線株の株価を動かす3つのマクロ要因#
個別企業の業績以前に、電線セクター全体を上下させる要因が3つあります。買い場・売り場を判断するうえで欠かせない視点です。
① 銅の価格#
電線の主原料は銅です。銅価格が上がると販売価格に転嫁できる分だけ売上が膨らむ一方、在庫評価や調達コストの面では逆風にもなります。多くの電線メーカーは銅価格を製品価格にスライドさせる契約を持つため、長期的には中立に近いものの、短期的には銅相場との連動で株価が動きます。
銅そのものの需給については、銅・レアメタル需要がAI時代に急増する理由で詳しく整理しています。
② 電力会社・データセンター事業者の設備投資計画#
電線メーカーの受注は、電力会社の送配電投資計画とデータセンター事業者(ハイパースケーラー)の建設計画に連動します。四半期ごとのマイクロソフト・アマゾン・グーグル・メタの設備投資(CapEx)ガイダンスは、電線株にとっても重要な先行指標です。これらが減額されると、電線株もセットで売られる傾向があります。
③ 為替(円ドル相場)#
日本の電線御三家はいずれも海外売上比率が高く、円安は業績の追い風になります。逆に円高局面では、実力に変化がなくても円換算の利益が目減りするため株価が伸び悩みます。決算での為替前提(想定レート)を確認しておくと、上振れ・下振れの余地が読めます。
電線株への投資で押さえるべきリスク#
もちろん、リスクもあります。
- AI投資の減速リスク:テック大手のCapEx(設備投資)が縮小すれば、電線需要も減少
- 銅価格の変動:電線の主原料である銅の価格変動が業績に直結
- 為替リスク:海外売上比率が高い企業は円高で業績が下振れする可能性
- 株価の過熱感:特にフジクラは急騰後の調整リスクに注意
分散投資を心がけ、一つの銘柄に集中しすぎないことが重要です。
NISAで電線株を買うには?#
電線株はすべて東証プライム市場に上場しており、NISAの成長投資枠で購入可能です。
NISAで株式投資を始めるなら、以下のネット証券がおすすめです:
どちらもNISA口座の開設は無料。まだ証券口座を持っていない方は、まずは口座開設から始めてみましょう。
まとめ:AIの「血管」を握る電線株は長期投資の有力候補#
| 銘柄 | タイプ | こんな人向け |
|---|---|---|
| フジクラ(5803) | 攻め | AI成長に全力で乗りたい |
| 住友電工(5802) | 守り | 安定配当+AI恩恵のバランス |
| 古河電工(5801) | バリュー | 出遅れ修正を狙いたい |
| SWCC(5805) | 小型成長 | ハイリスク・ハイリターン |
AIバブルが来ようと去ろうと、データを流す光ファイバーと電力を届けるケーブルの需要は消えません。電線株は、AI時代の「ツルハシ銘柄」として長期投資に値する有力なセクターです。
⚠️ 免責事項:本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いいたします。
よくある疑問(FAQ)#
Q. 電線御三家の中でAI恩恵を最も直接受けるのはどれですか?
フジクラ(5803)ですわ。データセンター向け超多心光ファイバーケーブルと光コネクタの需要が直撃しており、2026年3月期の営業利益は前年同期比+47.7%という驚異的な伸びを記録していますの。AI特需の恩恵が最も純粋に業績に反映される銘柄ですわ。
Q. SWCCは電線御三家と同じように投資できますか?
SWCCは時価総額が電線御三家より大幅に小さく、流動性も低い点には注意が必要ですわ。ただし、光ファイバーを2030年度までに7倍増産する計画は本気度の高い成長ストーリーですの。リスクが高い分、将来の成長余地も大きいと見ることができますわ。電線御三家で安定を確保しつつ、SWCC少量という組み合わせが現実的ですの。
Q. 銅価格が上がると電線株に影響しますか?
直接影響しますわ。電力ケーブルの主原料である銅の価格上昇は、コスト増として業績を圧迫しますの。ただし、多くの電線メーカーは銅価格の変動を販売価格に転嫁する「スルー仕組み」を持っており、一定程度は吸収できる構造になっていますわ。光ファイバー主体のフジクラは銅の影響が相対的に小さいですの。
Q. 電線株はいつまで成長しますか?
データセンター建設は2020年代後半まで加速が続くとの見方が主流ですわ。Microsoft・Google・Amazon・Metaなどのハイパースケーラーが発表した設備投資計画だけでも、2027〜2028年頃までの需要は可視化されていますの。さらにAIの電力需要に応じた送電網増強も光ファイバー・電力ケーブル双方の需要を後押ししますわ。
Q. 電線株はNISAの成長投資枠で買えますか?
はい、電線御三家・SWCCはすべて東証プライム上場で、NISAの成長投資枠で購入可能ですわ。長期保有を前提に積み立て感覚で買い増していく戦略が向いていますの。配当利回りも一定水準あるため、保有中の配当非課税メリットも享受できますわ。
この記事で押さえるポイント#
- 電線・ケーブル企業が「光(通信)」と「電力」の両面でAIインフラを支えることを理解した
- フジクラ(5803)がAI特需の恩恵を最も直接受ける「攻め」の銘柄と把握した
- 住友電工(5802)は多角化による安定感が強みの「守り」銘柄と理解した
- SWCCは光ファイバー7倍増産計画を持つ小型高成長銘柄と確認した
- 銅価格・為替・AI投資減速という3つのリスクを認識した
- ツルハシ投資完全ガイドで他のAIインフラ銘柄も確認した
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