- 半導体製造装置のシェアは「工程ごと」に見ないと意味がありませんの。会社単位の順位だけ見ても実態は掴めませんわ
- ASMLはEUV露光装置の唯一の供給者。2025年通期の売上高は326億ユーロ、2026年10月14日には第3四半期で過去最高の116.6億ユーロを出し、通期見通しを440〜450億ユーロに絞り込みましたわ
- コータデベロッパ(塗布・現像装置)は東京エレクトロンが世界シェア91%(CY2025・ガートナー基準/同社作成)、EUV露光向けに限れば自社推定100%。ただし同社の売上の34.1%が中国向けですの
- 「露光装置」はろこうそうちと読みますわ。用語の読み方は一覧表にまとめましたの
- レーザーテックはEUVマスク検査の中核企業。でも2026年6月期は減収減益でしたわ——「ASMLが売れれば連動する」は単純すぎますの
- 3社は競合ではなく工程が違うだけ。だからこそ3社まとめ買いは分散になりませんのよ 🌹
ごきげんよう、ローゼンマイヤーですわ 🌹
「半導体製造装置のシェアってどこが1位なの?」——検索するとバラバラの数字が出てきて、余計に混乱いたしますわよね。
理由は単純ですの。この業界に「総合1位」という概念があまり意味を持たないからですわ。
半導体をつくる工程は数百ステップあり、装置メーカーはそれぞれ違う工程を担当しています。露光で世界シェア100%の会社と、洗浄で20%の会社を「どっちが強いか」で比べても、答えは出ませんの。
ですからこの記事では、①会社ごとの売上規模 → ②工程ごとのシェア → ③3社の関係という順番で、一次情報の数字だけを使って整理いたしますわ。
なお、この記事は「金鉱で儲けたのはツルハシを売った人」という考え方でAIインフラを見るツルハシ投資シリーズの一本ですの。
半導体製造装置とは? 工程と担当メーカーの対応表#
半導体チップは、シリコンウェーハの上にナノメートル単位の回路を刻み込んで作られます。この工程は数百ステップにも及び、それぞれに専用の装置が必要ですの。
| 工程 | やっていること | 主なメーカー |
|---|---|---|
| 露光(リソグラフィ) | 回路パターンをウェーハに焼き付ける | ASML、ニコン、キヤノン |
| コータ/デベロッパ | 感光材(レジスト)の塗布・現像 | 東京エレクトロン |
| 成膜(CVD/ALD/PVD) | ウェーハ上に薄膜を形成する | Applied Materials、東京エレクトロン |
| エッチング | 不要な部分を削り取る | Lam Research、東京エレクトロン |
| 洗浄 | 微細なゴミを除去する | SCREEN HD、東京エレクトロン |
| 検査・計測(ウェーハ) | 欠陥や寸法を確認する | KLA |
| 検査(フォトマスク) | 回路の「原版」の欠陥を調べる | レーザーテック |
| 切断・研磨 | ウェーハを個々のチップに分ける | ディスコ |
この工程のどれか一つが欠けても、チップは完成しません。だから装置メーカーはAIサプライチェーンの最上流に位置しているのですわ。
そして重要なのは、同じ表に載っている会社同士がほとんど競合していないという点ですの。ASMLとレーザーテックは違う行にいますし、東京エレクトロンは複数の行にまたがっています。ここを理解しないまま「装置株」とひとくくりにすると、判断を誤りますわ。
半導体製造装置の用語と読み方#
決算資料やニュースに出てくる用語は、漢字の読み方からして迷いやすいですわよね。この記事に出てくるものを先にまとめておきますの。
| 用語 | 読み方 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| 露光 | ろこう | 光を当てて回路パターンを転写すること |
| 露光装置 | ろこうそうち | その転写をする機械。英語ではリソグラフィ装置、スキャナー、ステッパーとも呼ばれますわ |
| 塗布 | とふ | 感光材(レジスト)をウェーハに薄く塗ること |
| 現像 | げんぞう | 露光後、光が当たった部分(または当たらなかった部分)のレジストを溶かして模様を浮かび上がらせること |
| コータ/デベロッパ | こーた/でべろっぱ | 塗布(coat)と現像(develop)をする装置。「コータデベロッパ」と続けて書くことも多いですの |
| 感光材(レジスト) | かんこうざい | 光に反応して性質が変わる樹脂 |
| 成膜 | せいまく | ウェーハの上に薄い膜をつくること |
| 酸化/拡散 | さんか/かくさん | 高温炉で酸化膜をつくったり不純物を広げたりする工程 |
| 洗浄 | せんじょう | 微細なゴミや残渣を除去すること |
| フォトマスク(レチクル) | ― | 回路の「原版」。レチクルは露光装置用のフォトマスクを指すことが多いですわ |
| 前工程 | まえこうてい | ウェーハ上に回路をつくるまでの工程 |
| 後工程 | あとこうてい | 切り分け・組立・検査など、チップを製品に仕上げる工程 |
| 研削 | けんさく | ウェーハの裏側を削って薄くすること(ディスコの主力) |
| EUV | いーゆーぶい | 極端紫外線(Extreme Ultraviolet)。波長13.5nmの光ですの |
とくに「露光(ろこう)」は「ろっこう」「つゆこう」と読み違えやすい語ですわ。カメラの「露出」と同じ「露」で、光にさらすという意味ですの。
半導体製造装置メーカーの世界シェア【2026年最新の売上高ランキング】#
まず市場全体の大きさから確認いたしますの。
業界団体SEMIの「Worldwide Semiconductor Equipment Market Statistics(WWSEMS)」によれば、2025年の世界の半導体製造装置販売額は1,351億ドル。2024年の1,171億ドルから15%増で、過去最高を更新しましたわ。
内訳の伸びに特徴がありますの。前工程のウェーハ処理装置が12%増だったのに対し、テスト装置は55%増、組立・パッケージング装置は21%増。AIチップとHBM(広帯域メモリ)が、後工程の装置需要を押し上げている構図ですわ。
さらにSEMIが2026年9月3日に公表した最新値では、**2026年第2四半期の販売額は405.3億ドル(前年同期比23%増、前期比11%増)**で、2四半期連続の過去最高。SEMIは2026年7月14日の年央予測で、2026年通年は1,659億ドル(23.2%増)、2028年には2,290億ドルまで伸びると見込んでいますわ。2026年は明確な上昇局面にありますの。
では、その市場を誰が取っているのか。各社が公表した直近通期の売上高で並べるとこうなりますわ。
| 順位 | 企業 | 決算期 | 売上高(現地通貨) | 参考:米ドル換算 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ASML(蘭) | 2025年12月期 | 326.67億ユーロ | 約380億ドル |
| 2 | Applied Materials(米) | 2025年10月期 | 283.7億ドル | 283.7億ドル |
| 3 | Lam Research(米) | 2026年6月期 | 232.33億ドル | 232.3億ドル |
| 4 | 東京エレクトロン(日) | 2026年3月期 | 2兆4,435億円 | 約159億ドル |
| 5 | KLA(米) | 2026年6月期 | 135.8億ドル | 135.8億ドル |
| 6 | SCREENホールディングス(日) | 2026年3月期 | 6,057億円 | 約39億ドル |
| 7 | ディスコ(日) | 2026年3月期 | 4,368億円 | 約28億ドル |
| 8 | レーザーテック(日) | 2026年6月期 | 2,304億円 | 約15億ドル |
各社の決算短信・プレスリリースより。ドル換算は2026年9月10日時点の1ドル=153.59円、1ユーロ=1.1633ドルで筆者が計算した参考値です。
この表を読むときの注意点を3つ申し上げますわ。
1. 決算期がバラバラですの。 ASMLは暦年、東京エレクトロンとSCREENとディスコは3月期、Lam・KLA・レーザーテックは6月期、Applied Materialsは10月期。同じ「直近通期」でも、見ている景気の局面が半年〜1年ずれています。この業界で「前年比」を比べるときは、必ず決算期を確認してくださいまし。
2. 為替で順位が動きますの。 円安が進めば日本勢のドル換算売上は縮み、円高なら膨らみます。上の換算はあくまで規模感の目安ですわ。
3. 売上高=シェアではありませんの。 各社の売上にはサービス収入や装置以外の事業も含まれます。上位5社の合計は約1,190億ドルで市場規模1,351億ドルのかなりの部分を占めますが、これは「上位5社に極端に集中している」という傾向を示す数字であって、精密なシェアではございませんわ。
厳密なシェアを知りたいなら、会社単位ではなく工程単位で見るべきですの。次章に参りますわ。
工程別の世界シェア ── 東京エレクトロンが強いのはどこか#
工程別シェアを自社で公開している代表格が東京エレクトロンですわ。同社が2026年8月6日に公表した「Investors’ Guide」には、ガートナーの調査(Market Share: Semiconductor Wafer Fab Equipment, Worldwide, 2025/2026年4月2日発行、出荷ベース売上)をもとに同社が作成したCY2025の製品別シェアが載っていますの。
| 製品カテゴリ | 東京エレクトロンの世界シェア | 世界順位 |
|---|---|---|
| コータ/デベロッパ(塗布/現像) | 91% | 1位 |
| CVD | 38% | ― |
| ウェーハプローバ | 38% | 1位 |
| 酸化/拡散 | 31% | 1位 |
| 成膜装置(合計) | 27% | ― |
| ウェーハボンダー | 27% | 2位 |
| ドライエッチング装置 | 23% | ― |
| 洗浄装置 | 20% | 3位 |
| ALD | 15% | ― |
出所:東京エレクトロン「Investors’ Guide」2026年8月6日。ガートナー調査に基づき同社が作成。ウェーハプローバのみTechInsights Inc.(2026年4月)に基づく同社作成。
さらに同社は、**EUV露光用のコータ/デベロッパについては自社推定でシェア100%**としていますわ。EUV露光機を導入した工場のレジスト塗布・現像は、事実上すべて東京エレクトロンの装置が担っている、ということですの。
ここから分かることが2つございます。
東京エレクトロンは「一点突破型」ではなく「多角型」ですの。 91%を握る領域がひとつあり、その周りに20〜38%の領域が複数ある。だからEUVが停滞しても他工程で稼げますし、逆に言えばどれかひとつの工程が爆発しても業績が倍になる構造ではありませんわ。
洗浄では3位、ALDでは15%ですの。 「世界シェア90%の会社」というイメージだけで買うと、実際の収益構造とズレます。同社の売上の大半は91%の領域ではなく、20〜30%台の激戦区から来ているのですから。
ちなみに露光装置の分野では、ASMLがEUVを独占する一方、ニコンとキヤノンはArF・KrF・i線といった従来光源の装置で事業を続けており、キヤノンはEUVとは別方式のナノインプリント露光装置も手がけていますわ。両社の工程別シェアについては信頼できる一次情報での公表値が確認できなかったため、この記事では数字を出さずにおきますの。
コータデベロッパのシェア ── 東京エレクトロン91%、EUV向けは100%#
「コータデベロッパ シェア」で検索される方がいちばん知りたいのは、おそらくこの数字ですわね。
| 区分 | 東京エレクトロンのシェア | 出所 |
|---|---|---|
| コータ/デベロッパ全体(CY2025) | 91%(世界1位) | ガートナー調査をもとに同社作成(Investors’ Guide 2026年8月6日) |
| EUV露光用コータ/デベロッパ | 100% | 同社の自社推定 |
なぜ東京エレクトロンがここまで独占できるのか#
理由は、コータデベロッパが露光装置と「くっついて」動く装置だからですの。
- コータでレジストを塗る
- そのウェーハがそのまま隣の露光装置へ搬送され、回路を焼き付けられる
- 戻ってきたウェーハをデベロッパで現像する
この往復が1本のラインの中で連続して行われますから、コータデベロッパは露光装置との接続(インライン)と、レジストの膜厚・温度の精密管理が勝負になります。EUVは露光装置がASML1社しかありませんので、ASMLの装置と最初期から擦り合わせてきた東京エレクトロンが、EUVラインをほぼ丸ごと押さえる形になったわけですわ。
残りの約9%は誰が持っているのか#
コータ/デベロッパはSCREENグループも手がけていますが、各社のシェアを示す一次情報の公表値は見当たりませんでした。ここで数字を推測で埋めることはいたしませんの。確かなのは、東京エレクトロン以外の全社を合わせても1割に満たないという一点ですわ。
投資家にとっての意味#
- ASMLのEUV出荷が増える → 東京エレクトロンのEUV用コータデベロッパも増える。装置株の中ではいちばん素直な連動関係ですの
- ただしコータデベロッパは同社の製品群の一つにすぎません。成膜・エッチング・洗浄などの20〜30%台の領域のほうが売上の比重は大きく、「91%の会社」というイメージで業績を読むと外しますわ
ASMLのシェアが「EUVで100%」と言われる理由#
ASMLはEUV(極端紫外線)露光装置を製造できる世界で唯一の企業ですわ。これは推定シェアではなく、他に供給者が存在しないという事実ですの。
EUVは波長13.5nmの光を使う技術で、従来のArFエキシマレーザー(波長193nm)の10分の1以下。この極端に短い波長だからこそ、より微細なパターンが焼けるわけですわ。
2025年通期の実績と、2026年の上方修正#
ASMLが2026年1月28日に公表した2025年通期決算は以下の通りですの。
| 項目 | 2025年通期 | 2024年通期 |
|---|---|---|
| 総売上高 | 326.67億ユーロ | 282.63億ユーロ |
| 売上総利益率 | 52.8% | 51.3% |
| 純利益 | 96.09億ユーロ | 75.72億ユーロ |
| 新品露光装置の販売台数 | 300台 | 380台 |
| 期末受注残(バックログ) | 387.97億ユーロ | 359.38億ユーロ |
注目していただきたいのは台数と売上の逆行ですわ。販売台数は380台→300台と減ったのに、売上高は15.6%増えた。1台あたりの単価が高いEUV、とくにHigh NA機の比率が上がったからですの。「何台売れたか」だけを見ていると読み違えますわ。
そして2026年に入ってからの動きが劇的ですの。
- 2026年1月時点の2026年通期見通し:340〜390億ユーロ
- 2026年7月15日の第2四半期決算で上方修正:430〜450億ユーロ(売上総利益率54〜56%)
- 2026年10月14日の第3四半期決算で440〜450億ユーロに絞り込み(売上総利益率は約56%)
わずか半年で見通しのレンジが約100億ユーロ切り上がりました。第3四半期の売上高は116.62億ユーロ(四半期として過去最高)、売上総利益率57.5%、純利益49.6億ユーロ、新品露光装置の販売は113台。第4四半期は142〜152億ユーロを見込んでいますわ。
同社CEOは同じ発表で、2027年と2028年は現在の供給計画では顧客の需要を満たしきれないとの見方を示し、2028年に向けて30%を超える増産策を検討しているとしていますの。顧客の中には2029〜2030年分の発注を打診する動きもあるそうですわ。同社は2026年のlow NA EUVの生産能力を30%積み増す計画も表明していますわ。2025年第4四半期の受注131.58億ユーロのうち74億ユーロがEUVだったことからも、需要の中身がEUVに寄っているのが分かりますの。
なお、EUV露光装置1台あたりの価格については、以前この記事で「約200億〜400億円」といった数字を書いておりましたが、ASMLは機種別の価格を公表しておりません。出所を示せない概算値ですので削除いたしましたわ。台数と売上高という公表値から傾向を読むほうが、よほど確かですの。
東京エレクトロンのシェアと直近決算 ── 中国34.1%という偏り#
東京エレクトロンの2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)の連結業績はこちらですわ。
| 項目 | 2026年3月期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2兆4,435億円 | +0.5% |
| 営業利益 | 6,249億円 | −10.4% |
| 営業利益率 | 25.6% | −3.1pt |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 5,744億円 | +5.6% |
| 年間配当 | 628円 | +36円 |
増収なのに営業減益ですの。前期(2025年3月期)が売上32.8%増・営業利益52.8%増という絶好調だった反動で、伸びが止まった1年でしたわ。
ところが、そのあとの四半期で局面が変わっていますの。2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)は売上高7,323億円で前年同期比33.3%増、営業利益2,114億円で46.1%増、営業利益率は28.9%まで戻りましたわ。ASMLの上方修正やSEMIの記録的な四半期と、同じ方向を向いていますの。
見落とされがちな地域構成#
同社の2026年3月期の地域別売上高構成比がこちらですわ。
| 地域 | 構成比 |
|---|---|
| 中国 | 34.1% |
| 韓国 | 22.3% |
| 台湾 | 20.4% |
| 日本 | 9.8% |
| 北米 | 6.8% |
| 東南アジア・その他 | 3.8% |
| 欧州 | 2.8% |
売上の3分の1が中国向けですの。対中輸出規制が強化されれば、直接の減収要因になります。「世界シェア91%の日本企業」というイメージだけで買うと、この地政学リスクが視界から抜け落ちますわ。逆に言えば、規制のニュースが出たときに株価がどれくらい動きうるかを、この34.1%という数字で見積もれるということですの。
レーザーテックのシェアと直近決算 ── ASMLが最高益でも減収だった#
ここが、この記事で一番お伝えしたい部分ですわ。
レーザーテックはEUVリソグラフィ用フォトマスクの欠陥検査装置を早くから手がけ、この分野で中核的な地位を築いた企業ですの。EUVマスクに微細な欠陥が1つでもあれば、そのマスクから作られる全チップが不良になりますから、装置の重要性は極めて高いですわ。
よく言われるのが「ASMLがEUV露光機を売れば売るほど、レーザーテックの検査装置も売れる」という説明ですの。方向としては正しいのですが——直近の数字はそう単純ではありませんでしたわ。
| 項目 | 2026年6月期 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,304億円 | −8.3% |
| 営業利益 | 1,052億円 | −14.3% |
| 営業利益率 | 45.7% | −3.1pt |
| 当期純利益 | 774億円 | −8.5% |
| 受注高 | 2,375億円 | 回復基調 |
同じ時期、ASMLは2025年通期で15.6%増収・過去最高でしたのに、レーザーテックの2026年6月期(2025年7月〜2026年6月)は減収減益。セグメント別では半導体関連装置が17.2%減、一方でサービス部門は36.5%増でしたわ。
なぜズレるのか#
理由は3つございますの。
- 決算期が半年ずれている。 ASMLの2025年12月期と、レーザーテックの2026年6月期。同じ暦の期間を見ていませんわ
- 検査装置は露光機より受注が先行する。 マスク検査装置は量産立ち上げの前段階で導入されます。ASMLの出荷ピークと同時ではなく、その手前に山が来ますの
- 前期の反動。 2025年6月期が17.8%増収・営業利益51.0%増でしたから、その反動が出ましたわ
そして今後の見通しは強気ですの。同社の2027年6月期予想は売上高2,900億円(25.8%増)、営業利益1,250億円(18.8%増)。受注高2,375億円という足元の回復と整合していますわ。配当も329円から351円へ増配予定ですの。
教訓:「A社が伸びればB社も伸びる」という連動ストーリーは、決算期のズレと受注タイミングのズレで簡単に破綻いたしますわ。 連動を前提に買うなら、せめて受注高という先行指標のほうを見てくださいまし。
ASMLと東京エレクトロンの関係と違い#
「ASMLと東京エレクトロンはどっちが上?」という疑問をよく見かけますが、この2社は比較する関係にありませんの。
| ASML | 東京エレクトロン | |
|---|---|---|
| 担当工程 | 露光(リソグラフィ)のみ | 塗布/現像・エッチング・成膜・洗浄・検査など多数 |
| 事業の形 | 単一工程で圧倒的 | 複数工程に分散 |
| EUV依存度 | 極めて高い | 相対的に低い |
| 直近通期売上 | 326.67億ユーロ(2025年12月期) | 2兆4,435億円(2026年3月期) |
物理的に連結して動く「前後関係」#
露光の直前にはウェーハに感光材(レジスト)を塗る工程、直後には現像する工程が必要ですの。このコータ/デベロッパを担うのが東京エレクトロンですわ。
実務上、ASMLの露光機と東京エレクトロンのコータ/デベロッパは物理的に連結して1つのラインとして稼働します。両社は長年にわたって技術的な擦り合わせを続けてきた関係で、競合ではございませんの。
東京エレクトロンがEUV露光用コータ/デベロッパで自社推定シェア100%としているのは、この密結合の結果ですわ。ASMLのEUV出荷が増えれば、東京エレクトロンのその領域も増える——ここは素直な連動関係ですの。
ただし東京エレクトロンにとってEUV関連は事業の一部でしかありません。中国向け34.1%という構成比が示すとおり、成熟ノード向けの需要のほうが金額としては大きいのですわ。ASMLのニュースだけで東京エレクトロンの業績を予測しようとすると外しますの。
ASMLとレーザーテックの関係#
こちらも競合ではなく、同じEUVという波に乗る補完関係ですわ。
- ASML:EUV光でウェーハに回路を焼く「露光機」をつくる
- レーザーテック:その露光に使う「原版(フォトマスク)」に欠陥がないか調べる装置をつくる
EUVマスクの欠陥は、そのまま全チップの不良に直結いたします。だからEUVの導入が広がるほど、マスク検査の必要性も広がりますの。
ただし前章で見たとおり、両社の業績は同じ四半期に同じ方向へ動くわけではございませんわ。
| ASML | レーザーテック | |
|---|---|---|
| 直近通期 | 2025年12月期:+15.6% | 2026年6月期:−8.3% |
| 次期見通し | 2026年通期 430〜450億ユーロへ上方修正 | 2027年6月期 +25.8%の増収予想 |
| 業績のタイミング | 露光機の出荷時 | 量産立ち上げ前の検査装置導入時 |
投資家として押さえるべき読み方をまとめますわ。
- ASMLの受注(Net bookings)は業界全体の先行指標。 ここが崩れると装置株はセクターごと売られますわ
- EUV関連のニュースは「ASML+レーザーテック」をセットで見る。 ただし業績への反映時期は1年近くずれることがありますの
- 3社を同時に持つと分散になっているようで、実際には「半導体設備投資」という一つのリスクに賭けているだけですわ。ここは本当に注意してくださいまし
米国3社(AMAT・ラムリサーチ・KLA)のシェアと直近決算#
日本とオランダの話に偏りがちですが、金額ベースでは米国勢が業界の中核ですの。
Applied Materials(AMAT / NASDAQ)#
成膜・エッチング・イオン注入など幅広い装置を手がける総合メーカーですわ。
- **2025年10月期(通期):売上高283.7億ドル(4%増)**で6年連続の成長。GAAP EPS 8.66ドル
- 2026年7月期(第3四半期):売上高91.2億ドル(前年同期比25%増)で過去最高。GAAP営業利益30.8億ドル(売上比33.7%)、GAAP EPS 3.17ドル(43%増)
年度で見ると2025年は4%増と地味でしたが、2026年に入って四半期25%増へ加速していますの。DRAM・先端ファウンドリ・先進パッケージングが牽引していると同社は説明していますわ。
Lam Research(LRCX / NASDAQ)#
エッチングと成膜に特化したメーカーですの。
- 2026年6月期(通期):売上高232.33億ドル。前期の184.36億ドルから26.0%増
- 2026年6月四半期:売上高67.22億ドル、GAAP売上総利益率51.7%、営業利益率37.4%
- 2026年9月四半期(2026年10月21日発表):売上高82.19億ドル(前期比22%増)、GAAP売上総利益率52.3%、営業利益率40.0%、GAAP EPS 2.19ドル。12月四半期は86億ドル±4億ドルを見込みますの
3D NANDの多層化やHBM関連の需要が効いていますわ。装置大手のなかで直近の伸びが最も大きいのがラムリサーチですの。
KLA(KLAC / NASDAQ)#
ウェーハの検査・計測(プロセス制御)で世界トップの企業ですわ。レーザーテックがマスクの検査なら、KLAはウェーハ側の検査、と役割が分かれていますの。
- 2026年6月期(通期):売上高135.8億ドル、GAAP純利益48.3億ドル、GAAP EPS 3.66ドル
- 2026年6月11日に1株を10株に分割(上の1株当たり数値は分割後基準)
チップが複雑になるほど検査工程は増えますから、微細化と先進パッケージングの両方が追い風になる立ち位置ですわ。
日本のその他メーカー ── SCREEN・ディスコ・ニコン・キヤノン#
東京エレクトロンとレーザーテック以外にも、特定工程で世界トップの日本企業がございますの。
SCREENホールディングス(7735)#
ウェーハ洗浄装置の大手ですわ。
- 2026年3月期:売上高6,057億円(3.1%減)、営業利益1,225億円(9.7%減)、営業利益率20.2%
東京エレクトロンと同じく、前期の反動で減収減益の1年でしたの。洗浄は東京エレクトロンが世界シェア20%で3位ですから、この領域はSCREENが上位にいる激戦区ですわ。
ディスコ(6146)#
ウェーハを個々のチップに切り分けるダイシングソーと、薄く削るグラインダの会社ですの。後工程の入り口を押さえていますわ。
- 2026年3月期:売上高4,368億円(11.1%増)、営業利益1,850億円(10.9%増)、営業利益率42.3%、当期純利益1,355億円
注目すべきは**営業利益率42.3%**ですわ。東京エレクトロンの25.6%、SCREENの20.2%と比べて突出しています。HBMの多層化には薄く削る工程が不可欠で、AI需要が直撃する位置にいますの。SEMIの統計で組立・パッケージング装置が21%増だったのと整合しますわ。
ニコン(7731)・キヤノン(7751)#
かつて露光装置の主役だった両社は、EUVでASMLに先行を許しました。現在はArF・KrF・i線といった従来光源の露光装置を継続しており、キヤノンは光を使わずに型を押し当てるナノインプリント露光装置という別ルートを進めていますわ。
両社の露光装置シェアについては、信頼できる一次情報での最新公表値が確認できませんでしたので、この記事では具体的な数字を出さずにおきますの。「たぶんこれくらい」で書かれた数字を信じて投資判断をするより、分からないと書くほうが誠実ですわ。
市場規模と地域別の内訳 ── 買っているのは誰か#
装置メーカーの売上は、結局のところ半導体メーカーの設備投資そのものですの。ですから「どこの国が装置を買っているか」を知ることは、そのままリスクの所在を知ることになりますわ。
SEMIによる2025年の地域別内訳がこちらですの。
| 地域 | 2025年の装置投資額 | 前年比 |
|---|---|---|
| 中国 | 493億ドル | −0.5% |
| 台湾 | 315億ドル | +90% |
| 韓国 | 258億ドル | +26% |
| 日本 | 95億ドル | +22% |
中国・台湾・韓国の3地域だけで世界市場の79%(2024年は74%)。集中はむしろ強まっていますわ。
読み取れることが2つございますの。
台湾の+90%が異常値ですわ。 AIとHPC向けの生産能力増強が一気に来た結果で、これが2025年の市場を15%増に押し上げた主因ですの。裏を返せば、台湾の設備投資が一巡したときに市場が失速するリスクがあるということですわ。
中国は横ばいながら依然として最大の買い手ですの。 493億ドルは市場の36%にあたります。東京エレクトロンの中国向け34.1%という構成比は、市場構造をそのまま映しているだけとも言えますわ。だからこそ、対中輸出規制は業界全体の問題ですの。
シェアが高い=安泰ではない ── 投資家が見るべき3つの数字#
ここまで見てきたシェアの数字は、「今の強さ」であって「将来の業績」ではありませんわ。実際、シェア91%の東京エレクトロンも、EUV検査の中核レーザーテックも、直近の通期は減益でしたの。
装置株を見るときに、シェアより先に確認すべき数字を3つ挙げますわ。
1. 受注高・受注残(バックログ)#
売上高は過去、受注は未来ですの。
- ASML:2025年末のバックログ387.97億ユーロ、2025年通期の受注280.35億ユーロ
- レーザーテック:2026年6月期の受注高2,375億円(売上2,304億円を上回っており、翌期の増収予想と整合)
受注が売上を上回っていれば、翌期は増える方向。逆なら減る方向ですわ。決算短信の売上高だけ見て一喜一憂するのは、後ろ向きに歩いているのと同じですの。
2. 顧客の設備投資計画(CapEx)#
TSMC・サムスン・インテルの設備投資計画が、そのまま装置メーカーの売上の源泉ですわ。上で見たとおり台湾は2025年に90%増でしたが、この水準が続くとは限りませんの。
3. 地域別売上構成比#
対中輸出規制のリスクを測る唯一の方法が、これですわ。東京エレクトロンなら34.1%。各社の決算資料の地域別セグメントを見れば、政策リスクの大きさを自分で見積もれますの。
そして「シリコンサイクル」を忘れないでくださいまし。 装置メーカーの株価は実際の業績よりも半年〜1年先を織り込んで動きます。「決算が絶好調なのに株価が下がる」のは、市場がピークアウトを織り込み始めたサインであることが少なくありませんわ。SEMIが集計する装置販売額は、業界の体温計として無料で確認できますの(SEMI)。
NISAで半導体製造装置株を買うときの考え方#
銘柄の整理#
日本株(NISA成長投資枠)
| 銘柄 | コード | 押さえどころ |
|---|---|---|
| 東京エレクトロン | 8035 | コータ/デベロッパ91%。ただし中国向け34.1% |
| レーザーテック | 6920 | EUVマスク検査。営業利益率45.7%だが値動きが荒い |
| SCREEN HD | 7735 | 洗浄装置。東京エレクトロンと同じ工程で競合 |
| ディスコ | 6146 | 後工程の入り口。営業利益率42.3%はAI需要の直撃を反映 |
米国株・欧州株(NISA成長投資枠)
| 銘柄 | ティッカー | 押さえどころ |
|---|---|---|
| ASML | ASML | EUV唯一の供給者。2026年見通しは440〜450億ユーロ |
| Applied Materials | AMAT | 売上規模2位。直近四半期25%増と加速 |
| Lam Research | LRCX | 直近通期26%増、9月四半期も前期比22%増 |
| KLA | KLAC | ウェーハ検査トップ。2026年6月に10分割 |
ASMLは米国市場にADR(ティッカー: ASML)が上場しており、主要ネット証券の米国株取引で購入できますわ。NISA成長投資枠の対象ですの。
買い方の考え方#
- 一括投資は避け、時間分散する。 サイクルの底と天井を当てるのはプロでも困難ですわ。NISAのつみたて投資枠は個別株に使えませんが、成長投資枠のなかで「毎月◯株ずつ」と自分でルール化することは可能ですの
- 3社まとめ買いを分散だと思わない。 ASML・東京エレクトロン・レーザーテックは工程が違うだけで、設備投資という同一のリスク要因に乗っています。本当の分散にはなりませんわ
- 個別が怖いなら半導体ETFという選択肢もございますの。 SOXX・SMHなどは設計・製造企業も含む構成ですから、装置に絞りたい場合は個別株の組み合わせで調整することになりますわ
- 口座の使い方そのものを整理したい方は、新NISA成長投資枠の使い方もあわせてご覧くださいまし
よくある質問(FAQ)#
Q. 半導体製造装置のシェア1位はどこですか? A. 「総合1位」という指標は実質的に存在いたしませんの。売上高では2025年通期326.67億ユーロ(約380億ドル)のASMLが最大ですが、工程別では露光=ASML、コータ/デベロッパ=東京エレクトロン(91%)、エッチング=Lam Research、ウェーハ検査=KLA、マスク検査=レーザーテックと、担当が分かれていますわ。「どの工程の1位か」を聞き返すのが正しい姿勢ですの。
Q. コータデベロッパのシェアはどこが1位ですか? A. 東京エレクトロンですわ。CY2025の世界シェアは91%(ガートナー調査をもとに同社作成)、EUV露光用に限れば同社推定で**100%**ですの。露光装置と連結して動く装置なので、EUV露光機を独占するASMLとの擦り合わせが参入障壁になっていますわ。
Q. 露光装置の読み方は? A. **「ろこうそうち」**ですわ。「露光(ろこう)」は光にさらすという意味で、カメラの「露出」と同じ字ですの。英語ではリソグラフィ装置、スキャナー、ステッパーと呼ばれます。他の用語は用語と読み方の表をご覧くださいまし。
Q. ASMLと東京エレクトロンはどちらが強いですか? A. 比較する関係にございませんわ。ASMLは露光1工程に特化し、東京エレクトロンは塗布/現像・エッチング・成膜・洗浄など複数工程を担当します。両社の装置は物理的に連結して1つのラインとして動きますの。競合ではなく前後関係ですわ。
Q. レーザーテックとASMLの関係は? A. ASMLがEUV露光機、レーザーテックがそのEUV露光に使うフォトマスクの検査装置をつくっています。補完関係ですわ。ただし業績は連動しませんの——ASMLが2025年通期に15.6%増収だった一方、レーザーテックの2026年6月期は8.3%減収でした。決算期のズレと、検査装置が量産立ち上げの前段階で導入されることが理由ですわ。
Q. 半導体製造装置株と半導体メーカー株、どちらが有利ですか? A. どのチップメーカーが勝っても装置は必要になるため、装置株には「勝者を当てる必要がない」という読みやすさがございますわ。ただし設備投資が止まったときの打撃は装置株のほうが大きいですの。2025年の市場は台湾の90%増が押し上げた面が強く、この投資が一巡すれば反動は避けられませんわ。
Q. 装置株をまとめて買えるETFはありますか? A. 半導体全般ならSOXX・SMHなどがございますが、設計・製造企業も含む構成ですの。装置メーカーだけを純粋に集めたETFは限られますから、個別株の組み合わせで調整するのが現実的ですわ。
Q. 中国の輸出規制はどれくらい影響しますか? A. 東京エレクトロンは2026年3月期の売上の34.1%が中国向けですわ。市場全体でも2025年に中国が493億ドル(世界の約36%)を投じており、業界最大の買い手ですの。規制強化は各社の直接の減収要因になりますから、決算資料の地域別売上構成を必ずご確認くださいまし。
Q. レーザーテックは空売りレポートで話題になりましたが大丈夫ですか? A. 過去に海外の空売り機関からレポートが出て株価が大きく変動した経緯がございますわ。事実関係は各自で一次情報を確認し、単一の情報源を鵜呑みにしないことが重要ですの。決算短信の受注高と営業利益率を自分で追う姿勢が求められる銘柄ですわ。
まとめ:シェアは「工程ごと」に、業績は「受注」で読む#
長くなりましたので、要点を整理いたしますわ。
シェアについて
- 会社単位の「総合1位」はほぼ無意味。工程ごとに1位が違いますの
- ASML=EUV露光の唯一の供給者、東京エレクトロン=コータデベロッパ91%(EUV向けは100%)、レーザーテック=EUVマスク検査、KLA=ウェーハ検査、Lam=エッチング、ディスコ=切断・研磨
- 売上規模ではASML(約380億ドル)> AMAT(283.7億ドル)> Lam(232.3億ドル)> 東京エレクトロン(約159億ドル)> KLA(135.8億ドル)
3社の関係について
- ASML・東京エレクトロン・レーザーテックは競合ではなく工程が違うだけ
- ASMLと東京エレクトロンは装置が物理的に連結する前後関係
- ASMLとレーザーテックは補完関係だが、業績は同じ四半期に連動しませんわ
投資判断について
- 2025年の市場は1,351億ドル(15%増)、2026年第2四半期は405.3億ドル(23%増)、SEMIの2026年通年予測は1,659億ドルと上昇局面
- ただし台湾+90%が押し上げた市場であり、一巡後の反動リスクがございますの
- 見るべきは売上高より受注高・バックログ・地域別構成比
- 3社まとめ買いは分散になりませんわ
どのAI企業が最終的に勝つかは誰にも分かりません。でも、どの企業が勝ってもチップは必要で、そのチップを作る装置は必要——これが半導体製造装置への投資の本質ですの。
ただ、「必要とされること」と「株価が上がること」は別ですわ。シェア91%でも減益になる。EUV検査の中核でも減収になる。シェアの数字に安心せず、受注という未来の数字を見てくださいまし。
まさに、ツルハシ投資の王道にして、いちばん誠実な向き合い方ですわ 🌹






